人魚姫2 (ページ14)

今日:9 hit、昨日:2 hit、合計:36,384 hit

63 ページ14

・b

音楽番組の収録を無事に終わらせた俺たちは、控え室でわちゃわちゃしながら次の撮影に備えていた。

「ディオ！！」

控え室の扉を勢いよく開けて飛び込むなり、ギョンスの名前を叫んだのはマネージャーだった。

「っ、え、なんですか…？」

ソファでくつろぐギョンスの瞳が大きく見開いて、白の面積がぐっと広くなる。

「決まったよ！主演！映画！」

興奮で単語しか喋れないマネージャーを、みんなすごい顔で見つめてる。

「へ？」

けど、1番変な顔で驚いてるのはギョンス。

「…それって、ギョンス主演の映画が決まってことですか？」

スホヒョンがゆっくりと聞き返すと、マネージャーはうんうんと何度も頷いた。

「え…ほんとですか、？」

戸惑うような、でも期待で胸膨らむような嬉しさがギョンスの顔から見て取れる。

「おめでと、ギョンス」

なんだか俺まで嬉しくなる。

素直に零れた言葉に、ギョンスが笑顔で頷いた。

「どんな映画なんだろ～楽しみだね」

ミンソクヒョンが言って、

「今日はお祝いだなぁ～」

ってチャニョルが続く。

ギョンスは相変わらずずっとニヤニヤしてるから、そのせいで俺にもニヤニヤが移ってしまった。

「よしっ、じゃあ撮影早く終わらそ！」

それを隠すように立ち上がった俺は、ギョンスの髪をくしゃくしゃっと撫でた。

「セットしたばっかなんだけど笑」

なぁ、苦笑するお前の顔を、俺はどんな顔で見ていた？

あの時、俺はほんの少し気づいていた。

見ないフリして、見えないようにして。

でも、心の中にはシコリがあって。

だってさ、ギョンス。

彼女が俺らの横をすり抜けた時、

あの時。

お前、彼女のこと目で追ってたでしょ？

あれだけいる人の波に、彼女を、彼女だけを見てた。

まだ小さい違和感の風船が、俺の中で膨らむのにそう時間はかからなかった。