人魚姫2 (ページ11)

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ーーーっ、え…？

それは、突然。

同じ香りだ。

私に、優しくしてくれる人と一緒。

瞬間、ギョンスさんがそこにいた気がした。

私の横をすり抜けていったような、

それくらい近くで香った微かな彼の匂い。

振り返って彼を見つけようとしたけど、彼の姿は私の瞳には映らない。

そんなわけない。

きっと、彼のことを考えていたから勝手にそうだと決めつけてしまっただけ。

「テレビ関係の仕事、です」

彼は昨日、そんなことを言っていた。

そんなわけ、ない。

きっと違うって。

もう一度振り返ってみたけど、もうその場所には彼の香りすら残っていなかった。

少しだけ吐いた息に、首を横に振る。

今夜、彼が店に来たら聞いてみよう。

鼻歌混じりに口ずさんだいつかどこかで聴いた曲。

その曲名がなんだったのか思い出せないまま、空は少しずつ暗くなっていく。

震えもしないスマホを眺め、『次はいつ来ますか？』のメッセージも送れずにいる私は、数時間経ってやっと動いたそれを取り、「今日の俺の夜食」と言ってビョン・ベクヒョンが送ってきた美味しそうな写真に笑みをこぼす。

…結局、その日彼は店に来なかった。