人魚姫2 (ページ46)

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「あのさ、昨日はごめん」

『え？』

「A泣いてたのに、俺、何もしないで仕事行ったから…」

『そんなこと、』

そんなこと、気にしてたの？

『全然、そんなの気にしてないよ』

「…ごめん、ほんとに。ちゃんと会って言うべきなんだけど。今、すごく謝りたくなって」

真剣な声。本当に悪いと思ってるんだな。全然、私なんてそんなのまったく気にしてないのに。

『ううん、ベクは悪くないから。謝らないで。私こそ、あんな場所でいきなり泣きだしてごめん』

「…そんなの、俺も気にしてないよ」

『え、』

「なーんだ、よかった」

ベクの声が急に弾んだ。

「俺、Aに嫌われたと思ってた。あれから連絡なかったし、もう会えないんだなぁって」

『うそ、そんなわけない。そんなんで嫌いになんか…』

言いかけて、ハッとした。

急に恥ずかしくなって、耳が熱くなる。

「そっか、嫌われてないんだ俺」

『え、まぁ…うん、』

「じゃあさ、またデートしよ？今度はAが行きたいとこに行くってことで」

デート…

それってどう言う意味？

私、期待しちゃいそうだよ。

『うん…じゃあ、考えとく』

「おっけ。んじゃおやすみ。気をつけて帰ってね」

『うん、おやすみなさい』

交わしたおやすみに、胸が熱くなる。

デート、デート、デート…

2人で出かけるのは初めてじゃない。

なのに、すごくドキドキしてる、私。

だって、言ったことないじゃん。

ベクの口からデートなんて言葉、出たことないじゃん。

なんで、そんな思わせぶりな言い方するの…？