人魚姫1 (ページ10)

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4年前、私は高校1年生だった。

汚れひとつない綺麗な制服に身を包み、これから始まる高校生活に夢を膨らませ、鼻歌を歌うくらい心躍っていた。

入学式が終わり、5月が過ぎ、6月、7月、夏休みに入ろうとしていたある日の昼休み。

深刻な面持ちで息を切らし教室に入ってきた担任が、私を見つけ低い声で言った。

「百瀬、これから病院に行くぞ」

私は数人の友達と恋バナで盛り上がっていたとこだった。

『どうしたんですか、怖いですよ』

「いいから、行くぞ」

担任は私を教室から引っ張り出し、自分の車に私を乗せるとエンジンをかけた。

「お前のお父さんとお母さん、事故で今病院にいるらしい」

赤信号で急ブレーキをかけた担任の横顔が、ひどく青ざめいたのを私は鮮明に覚えている。

『なんの冗談ですか、』

私はそう言ったのに、担任はもう二度と私に話しかけてこなかった。

病院に着いてからは、驚くほど早く時間が過ぎたように思えた。

父と母はその日、2人でドライブを楽しんでいた。もちろん、後ろの車が飲酒運転をしているとは知らずに。

父と母は私の目の前で息を引き取り、父と母を殺した人は、同じ病院のどこかの病室で一命をとりとめた。

その日から、私の時間は止まったみたいに動かなくなった。

その後、祖父と祖母が私を引き取り、一緒に暮らすことになった。

高校を卒業させてくれ、大学まで入れてくれた。本当に、2人には感謝している。

それでも、私の世界はあの日からずっと、同じ時間を繰り返してる。

そこから進まない。

進めない。