人魚姫1 (ページ9)

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私の世界はとても狭い。

6畳半の部屋と、鉢植えを5個置いたら身動きがとれないベランダ。

自転車を走らせ、30分程で着く大学。

3キロ先の、50代の店長とバイト4人のコンビニ。

それが私の世界。

田舎から上京して今年で1年が経とうとしていた。

入学当初からずっと何か違うと思っていた。

大学の勉強には辛うじてついていけてるし、サークルの子や同じ学部の友達とは楽しいキャンパスライフを送っている。

バイト先のコンビニも、店長が優しいお陰で融通が利き、バイト仲間とも仲良くやっている。

それでもなんだか、胸のどっかにナニカが引っかかって、魚の小骨みたいに鬱陶しい。

家、と言っても家賃の安いボロアパートだが、そこが私の帰る場所で。

勢いよくベッドに倒れこんだ私の頭の中には、いつも同じ人の顔。

私を残してこの世界から消えた父と母。

今更涙なんて出ないし、思い出したってしょうがない事は私だって分かってる。

それでも、どうしようもなく忘れられないのだ。

楽しかった日々が、2人の笑顔が、私の頭の中には棲み着いている。