人魚姫1 (ページ30)

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「んー、てかどっかで聞いた事あるんですよね、その名前」

遠くを見つめ考え込むリン君

『え、どこで？』

「なんだっけなぁ…芸能人でいた気がするんすよ、確か」

芸能人？

そんなわけないよ、

「俳優？ん、アイドルだったかな…」

確かに、その人は整った綺麗な顔してたよ？

でも、芸能人があんな街中にいるわけないし。

そもそも、こんな私を助けるはずない。

『じゃあ、別の人だね同姓同名の』

「ん？てか、その人はAさんのなんなんすか？友達？」

リン君のふざけた声が、急に私の痛いところを突いてきた。

『え、』

…なんなんだろ、本当に

なんでこんに、頭の中はその人のことで埋め尽くされてるんだろ。

なにをしてても、私の隙間に入り込んでくる。

『…わかんないよ、』

どこか一点を見つめ呟いた私に、もうリン君はなにも聞いてこなかった。

お店の扉が、躊躇いがちにゆっくり開いた。