人魚姫1 (ページ29)

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翌日の空は、まるで水ををたっぷり含んだ青の絵の具を、真っ白な画用紙にぶちまけたような色だった。

雲の隙間から覗く、眩しいほどのキラキラした太陽の光が、私の場所まで天使を運んできてくれるんじゃないかって自惚れちゃうほど真っ直ぐ、私に降り注いでいる。

けれど、天使に似たその人とは会えないまま、私の1週間が終わろうとしている。

次、会う約束はしていない。

名前しか、知らない。

いや、その名前も今となってはもう、本当か嘘か分からない。

「まぁたその人ですか」

私の隣で頬杖をついて暇そうに自分の前髪をイジるリン君が、呆れた声で私を見ている。

『ん？なにが』

「 “ ビョン・ベクヒョン ”ですよ」

『え！？何でリン君が知ってるの！』

驚いた、どうしてその人の名を、この男子高生は知っているのだろう。

「いっっつも暇さえあれば呟いてますよ、気づいてないんですか？やばいっすよ」

『え、それもっと前に言ってよ』

「いや、無意識に言ってたって知らなかったんで(笑)」

リン君は、私に幼い笑顔を向けたかと思ったら、

「恋ってやつすか？相談乗りますよオレ」

と気持ち悪い笑みを浮かべた顔でそう続けた。

『恋？違うよ、そんなんじゃないって』

恋、

ううん、違う。

恋なんて、私は知らない。

恋するほどの心の余裕なんて、私にはない。

私はきっと、この先もずっと、人を好きになることは絶対にない。