人魚姫1 (ページ26)

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あ、

『…かわいい、』

私の唇から落ちた、その言葉。

彼が、少しだけ目を丸くする。

だって。笑った彼のその口が、ハートみたいに見えたから。

かわいいなって、思ってしまった。

『あっごめんなさい、笑った顔がすごくかわいかったのでつい…』

言い訳のような私の言葉に、彼は少しだけ顔を歪め、

「あんまり嬉しくないですね」

と言って苦笑した。

『ごめんなさい、あの。本当に」

怒っているのだろうか。

悪いことをしたな。

「それは多分、男が女性に言う言葉です」

口を開いた彼が、私が思ってたよりもずっと優しそうな顔していたから、彼はきっと怒っていないのだと分かる。

「男は、かっこいいの方が嬉しいです」

言い終わった彼の顔に、ほんのりと紅色が広がる。

『やっぱり、かわいいです』

そんな彼が、とてつもなく愛しいと思った。

真っ直ぐすぎるほどの視線が、苦しいくらいに胸に刺さる。

「意地悪ですね」

やがて、囁きに似た彼の声が、私の足元に落ちた。

私は彼を見上げ、

彼は、優しく目を細めた。