人魚姫1 (ページ21)

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「そういや、俺にお土産あるんじゃなかったのか？」

コウさんのレンタルビデオ屋でバイトを始めて1週間が経とうとしていた。

店は思ったよりも広いから、どこになんの作品があるのかまだ把握できていないけど、なんとか頑張っている。

そんなある日、同じアルバイトのリン君からレジ打ちを教えてもらっていたら、コウさんが私を邪魔しに横から入って来た。

『え、そんなこと言ったっけ？』

「あぁ、言ってた」

確かに、お土産は買ったのだ、日本で。

コウさんの好物の棒付き飴。

花束みたいににして包んでもらったのに、バカな私は、それを入れた紙袋ごとビョン・ベッキョンさんに渡してしまった。

しまったと思った時にはもう遅くて。

「まぁいいや、ゲテモノだろうし」

フンって鼻で笑ったコウさんは、目を細めておっきなあくびをすると、休憩所に戻ってしまった。

「暇ですねぇ」

コウさんの背中を見送り、隣のリン君が呟く。

リン君は高校2年生だと言っていた。ここで働いて1年の、私の大先輩。

「暇だねぇ」

レジの近くにある時計を眺めると時刻は21時24分を指していた。

もうとっくに高校生はお家へ帰る時間だというのに、リン君はいつも閉店の24時までしっかり働いて帰る。

これは法律に違反しないのだろうかとヒヤヒヤしているのだが、コウさんは好きでいるんだしいんじゃね？しか言わない。