人魚姫1 (ページ19)

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「本当にすみませんっ」

現場に着いたのは、17時12分。

まぁ、完全なる遅刻だ。

「いいよいいよ、こっちが間違えたんだし」

けれど、現場の監督さんは優しい人らしい。

その優しさに救われ、撮影は無事何事もなく終わり、共演者の人とも仲良くなれた。

家に帰る途中、運転席のマネージャーが

「その紙袋なんですか？」

と聞いてくるから、忘れかけていたその存在を思い出すことになった。

宿舎に着き、部屋の扉を開けると、きっとギョンスが作っているであろうカムジャタンの美味しそうな匂いがした。

「ただいまー」

空腹の胃が、お腹すいたと言わんばかりにきつく締め付ける。

「はやかったなぁ～」

一番最初に俺を出迎えたのはソファに横たわったチャニョルだった。

「まぁねぇ～」

そう言ってキッチンのほうを振り返ると、楽しそうに料理するギョンスとそれを邪魔するカイ。

他のメンバーは、今日は仕事で遅いのだろうか。

部屋にはまだ、3人しかいなかった。

「おかえりーって、それなに？」

ギョンスが指差したのは、俺の右手にある紙袋。

「んー、俺も知らない」

「なになに、ファンの子から？」

食いついてきたチャニョルがニヤニヤ笑ってる。

「いや、ちがう…」

ごそごそと紙袋を漁り、手に掴んだそれをゆっくりと持ち上げる