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扉を開けると
さっきと同じように階段に座っている平野くんがいた
紫「見て」
急にそう言われて
平野くんの視線を追った
「…？」
階段をジッと見ているから
私も見た、けど…なんだ？
何を見てるのか全然分からず
隣にしゃがみ込むと
紫「
「…え？蟻？」
紫「蟻」
「…蟻？笑」
思わず笑ってしまった
紫「自分の大きさくらいのモノ運んでる」
「あぁ…ほんとだね？」
よく見ると蟻が数匹
頑張って仕事をしている
「…ずっとこれ見てたの？」
紫「うん」
……平野くんって………………
隣に目をやると
綺麗な横顔
に、治りかけの傷を口元に見つけた
これ……
紫「なに？」
と、私が見ていたことに気づき
こちらを向いた平野くん
思った以上に距離が近くて
サッと視線を真正面に戻した
「ぅ、ううん」
ビックリした……
「あ、」
そうだ
「教科書…あの時ありがとう」
私のことをクラスメイトで隣の席だと
気づいているかどうか分からなかったけど
直接お礼を言いたかった
紫「あぁ、うん」
「…私のこと覚えてた？」
紫「うん」
分かってたんだ
なんだか嬉しい
数秒ほど会話が途絶えた私達
やっぱり…
やっぱり気になる顔の傷
「あの…」
問いかけても返答はなかったけど
そのまま話を続けた
「傷…大丈夫？」
紫「…気になる？」
「あ、いや…」
気になるのに話したくないかもしれないと思い
思わず否定してしまった
紫「なに持ってんの？それ」
「あ、これ？大学のパンフレット」
話を逸らしたってことは
そういうことだよね
紫「へぇ〜見せて」
「うん」
平野くんにパンフレットを渡すと
それを見ながら、大学行くんだと言われた
「いや、まだ決めてはないんだけど」
紫「ふーん」
「…平野くんはどうするの？」
紫「分かんない」
「そっか」
紫「名前なんだっけ」
「私？」
紫「うん」
「吉沢A…です」
紫「Aちゃんか」
突然に名前を呼ばれて少しドキドキした
紫「ごめんね、引き止めて」
「ううん、全然」
紫「早く帰んな？
俺と一緒にいるとこ見られると良くないでしょ」
そんなこと…
「なんで？」
紫「なんでって」
そう言うと平野くんは鼻で笑って
Aちゃん変わってんね、と言った
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作者名：おどぅん | 作成日時：2023年5月23日 10時
