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廉くんと教室を出てから戻ってくることはなく、
家の用事があるからと
足早に帰って行った菜々とさよならをして
1人で帰る家までの道。
“行くって言ってただろ”
“あぁ…分かってるよ”
この会話の真意が
気になって気になってしょうがない。
いつもどこにいて、何をしてるんだろう。
そしてすぐに
私が気になっていた言葉の真相がわかった。
次の授業まで菜々の席で話していると
急に廊下が騒がしくなった。
先「待てって、平野！」
紫「なんもねぇつってんだろ！」
先「分かったから、
とりあえずこっち来いって！」
紫「話すことなんかねぇよ！」
菜「え、なに？」
「…わかんない」
先生と平野くんの声が廊下の向こうから
響くように聞こえてきた。
みんなも何事だと
廊下に出て野次馬化としている。
すると、隣のクラスの先生がやってきて
次の時間自習ね、とだけ言って出て行った。
菜「やった、自習だって」
「うん…」
平野くん、どうしたんだろう…。
自習と言われたものの
すんなり指示に従う私達ではなく
何があったんだ、と
勝手に話を作って盛り上がっている。
男1「平野、顔に傷があったらしいぞ」
女1「なに？喧嘩？」
女2「イケメンな顔が〜」
男1「そこかよ。笑」
喧嘩…？
廉くんが言っていたことは
そういうこと？
大丈夫なのかな………。
ただクラスが同じで隣の席というだけの人のことを
心配だと思ったことは初めてだ。
そんなことを思いながら
先生と平野くんの声が聞こえていた方に目をやると
ちょうど廉くんが廊下を歩いているのが見えた。
「ぁ…」
あの人も怪我してるのかな。
すると廉くんが立ち止まり
誰かと話している様子だった。
その誰かは扉でちょうど見えない。
女2「あ、廉くんじゃん」
女1「かっこいい〜」
女2「誰と喋ってるんだろ」
女3「海人くんだよ、こっから見える」
女1「え、海人くん？あたしも見たいんだけど」
女の子たちの会話から聞こえてきた、海人という名前。
また新たな登場人物。
あ、もしかしてあの時のもう1人いたのが
海人っていう人かもしれない。
結局何があったのかは分からず
平野くんは先生に連れて行かれたまま
この日帰ってくることはなかった。
隣の机には平野くんが貸してくれた教科書に
私が書いて貼った付箋がなんだか悲しそうに見えた。
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作者名：おどぅん | 作成日時：2023年5月23日 10時
