慣れない環境 ページ1
「ふぇ‥うぅっ」
小児科医の増田貴久は院内にあるリハビリ室のドアの隙間から息を潜めて中を覗いていた。
「Aちゃん、まだもうちょっと頑張ろう?」
「‥やっ!‥ック‥ヒック‥」
「んー‥困ったな。しょうがない、お迎え呼ぼうか」
増田の姉の子供、Aは生まれつきの両耳難聴のため10日程前に人工内耳の手術を受けたばかりだ。
姉は海外でどうしても外せない仕事があったため、この病院で勤めている増田がしばらくAのことを預かるということになっている。
今日は人工内耳を入れてから初めての音入れの日
人生で初めて音を聴くAが混乱してしまわないか、ぐずったりしていないだろうかと心配でこっそりと仕事の合間に様子を見にきたのだが‥
予想通り初めてのことに戸惑ってしまったのかぐずりだしているAの姿が目に入り、自分はどうするべきかを冷静に考えていた。
すると言語聴覚士の方と目が合って、申し訳なさそうにしながらもリハビリ室に足を踏み入れる
「増田先生!ちょうどいいところに!今お迎え呼ぼうかって言ってたところなんですよ」
「すみません、迷惑かけちゃってるみたいで」
「いえいえ、最初は驚いてしまったりするお子さんも多いですから大丈夫ですよ」
Aの担当をしてくれる言語聴覚士さんは小児の担当に慣れているらしく優しく増田に微笑んだ。
「Aちゃん、お部屋戻ろうか?」
たくさんのおもちゃに囲まれて泣いていたAは、増田の声は聞こえないもののその気配に気付くと慌てて走ってきて
甘えるかのように増田の首に手を回す。
「じゃあ病棟戻ります。また明後日よろしくお願いします。」
「お待ちしてます。またねAちゃん」
知らない場所、知らない人、聞いたことのない音
新しい環境に少し疲れてしまったのかちょっとぐったりした様子のAはその挨拶にただ頷くことが精一杯で
その様子を見た増田はAを抱っこしながら言語聴覚士に少し微笑んで会釈すると自分の身体をドアのほうへと向け、リハビリ室を後にした。
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まる - 作品を作る前にルールをしっかりご確認下さい。オリジナルフラグをちゃんと外して下さい (2018年9月25日 6時) (レス) id: deb7525d57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mk28_blue | 作成日時:2018年9月25日 0時