とくべつな人達の短編集 (ページ16)

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＊限界に挑む　(cp要素は少ないです。) ページ16

side ( ryusei )

　一面白で埋め尽くされた空間。

　住処の地下に有るこの部屋はトレーニングルームとして本部から与えられた。
　
　
　そして今、ここは戦場と化している。
　
　唸り声を上げる者
　ひたすら喚く者
　隣にいる奴を永遠弄る者

「___っはやく、はやく終わって………」

　本業の雰囲気がまるで無い休日を送る俺たちやけど、トレーニングが入る日は皆目つきが違う。
　
　マフィアを潰しに行った時の、猛獣の如く鋭い眼。
　その眼が、今から行われる地獄のコースに突入する男どもの覚悟を示している。

　
　生半可な気持ちでトレーニングに挑むと怪我するどころじゃない。身体中バッキバキで永い1週間を過ごす事になるだろう。
　実際、最年少が経験していた。介護に付き合わさるのは非常にめんどかった。

「今から始めるけど、お前ら準備はええか。」
「この日の為にうどん一杯で済ませて来たわ。
　万端やで。」
「この日の為に4時起きでランニングして、
　その後淳太の服にゴキブリ仕込んだわ。
　今日はニコニコ天使ちゃんで終わったる。」
「この日の為に追い込んで来たわ。
　もうちょっと体痛いけどやったる。」

「うどんこっそり2杯目行っとったやないか。
　今体痛いんならもう死ぬんちゃう。アホや。
　重岡は筋トレ5セット追加で。」

　最年長の声で始まろうとしている。
　こんな時でもボケる余裕があるあの3人は本間に体力オバケ。濱ちゃんとかもうおかしい。体痛めてもするとか。

「やっぱ濱ちゃんには敵わんわ、」
「やな。絶ッ対俺無理やもん。
　濱ちゃん夜中ずっと筋トレしてんねん。
　ふんふん煩くて寝られへんやった。」
「…その割には望いびきかいてたけどな。
　そっちの方が煩かった。」

「そっちの3人も大丈夫か。」
「まあ、ダメやったらここにおらん。」
「_今日こそ濱ちゃんに追いつく。」
「_今日こそ途中でバテへん。」
「望はマジで頑張ってな。」

　個人的には淳太も不安やけど、今日は珍しくやる気に満ち溢れた顔つきや。しげに散々煽られたからかな。

「……っし、やるか」

　俺の少しの余裕も数分経てば消え去っているやろう。中々人のこと言えんくらいには俺も体力に自信が無い。

でも、これは自分との闘い。負ける訳にはいかない。
　
　
　皆の顔も本気モードに入った。
　
　もう、引き返せない。