*あとでね ページ15
side ( tomohiro )
さくさく、 とんとん、 ぐつぐつ、
普段張り詰めた状況で仕事をする事が殆どの俺にとっての至福の時間。
不揃いだった具材たちを均一に整えて、色とりどりの調味料たちでドレスアップさせる。仕上げに、パセリやミントなんかをアクセサリーに見立ててみれば、
そこには今にも手が伸びそうな程美味しそうな料理が。
自分次第でどんな物にだって作り上げられるその自由さと、逆に自分の今までに経験したモノが皿の上に如実に出てしまう事への少しの緊張感が料理にはあると思う。
そういうのが来ると燃えるタイプなので、料理がめちゃくちゃ好き。無意識のうちについ熱中しては止められたりもするけど。
今日は久し振りに台所に立ったので、肥えた舌を持つ奴らが大喜びする料理を作りたいなあ、
と思って早数十分。
__何故俺の後ろには重岡がひっついているんだか。
肩に顎乗っけたり、腰に手回して来たり、勝手に野菜食べたり、非常に鬱陶しい。
非常に、鬱陶しい。
しげには悪いけどあんま癒されないし邪魔。
「なあなあ、神ちゃん。」
「んー?今忙しいねんけどー、」
「ちょっとだけ、ちょっとだけでええからさ、
こっち向いて。」
「もう、なに」
「あーりがと、俺も手伝おかなっ、」
「__っ、ほんま、ずるい。」
「んふふ、神ちゃん楽しそうやったから。
ちょっとだけ、イタズラやなあ。」
しげの唇がほんの少し触れるだけで、
なんで、こんなに恥ずいんかな。
さっきまであんなに忙しなく動いていた手も、いつの間にか止まってしまった。
「止まってんで、神ちゃん。
一緒に美味しいの作ろうや。」
もう、しげのせいやのに。
「ちゃんとサポートしてな、」
「はーい!」
「返事はええな、」
「あーっ、ちゃうちゃう、それ入れるとこちがう!」
「えっここやなかった、」
「しげ、これ切ったんやな?」
「…しっかり丁寧にやったで」
「繋がってる。」
「……この黒い塊は何、」
「たぶん、オムレツかな、」
「俺の知ってるオムレツじゃない。」
余計な作業増やしやがって!
この重岡がやって来たことにより、結局いつもの倍時間がかかってしまった。
でも、いつもの倍楽しんで作れたので今回は良しとしよう。
片付けは全部重岡にさせます。
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作者名:おみかんぽ | 作成日時:2020年2月8日 21時