あのね、わたし。 (ページ23)

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背景、僕の暖かい君へ。ページ23

俺にとってAは唯一心の休まる場所だった。
Aちゃんは彼女はくれない安らぎを与えてくれる月みたいな存在だった。そんなAちゃんをずっとそばに置いておきたかったし、俺からAちゃんの側を離れるつもりもなかった。

ワガママでプリンセス気質の俺の｢彼女」とは違ってAちゃんはワガママも言わない。俺が面倒だと思う様な事は一切言わない、それに加え美人。スタイルも俺好みなAちゃんはそばに置いておくにはとても都合のいい子だった。

俺が｢Aちゃんは顔がいいから髪の毛は黒が似合うね」と言えば、それをちゃんと真に受けて暗い髪色で過ごすのがたまらなく愛おしいと感じた。

俺がAちゃんを尋ねる曜日は予定をいれずに居てくれた。例え出掛けていたとしても、帰ってきてくれた。

Aちゃんの腕の中はとても暖かくて、疲れて帰りたい場所はここだった。

Aちゃんの事を都合良く扱っていたのは間違いなく俺なんだ。そんなAちゃんを手放したのは俺の都合なんだけど。

いつだっただろう、Aちゃんが俺の誘いを断る様になったのは。

Aちゃんが他の男と遊んでる事なんてとっくに気付いていたのに。俺から離れていく訳がない、とどこからか湧いていた自信に満ちていた俺もまたバカなのかもしれない。

Aちゃんからの｢出てって、」は思ったよりも堪えたのだ。

あぁ、俺はAちゃんの事がこんなにも好きだったんだと今になって気が付いたって遅い。

5年と少し付き合った彼女とずっと側にいてくれたAちゃんを天秤にかけたとき、過ごした月日の長さで彼女を選んだ事を今更後悔したってどうにもならないのに。

｢ロンジュン、」と俺を求めるAちゃんに思いを馳せ今日も俺は彼女を抱いて眠りにつく。