あのね、わたし。 (ページ20)

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彼女と幸せになりたいページ20

｢必要不可欠、ただその一言にすぎる人かな。彼がいないと生きていけないの、」

Aちゃんは、あの日俺がキレイだと見惚れたあの表情で俺じゃない誰かを思い浮かべてそう答えた。相変わらずその美しい表情は俺の心を掴んで放してくれないみたい。

｢彼には付き合って長い彼女がいるの、わたしが付け入る隙間なんてきっとないんだけどね？」
｢そんな事、全部わかってて側にいるの」

｢Aちゃん、わかったよ。大丈夫」

ジェノがいる事も忘れて彼女の髪を撫でる。無意識に俺の手に擦り寄る彼女はやっぱり可愛いくて。この人を彼女にしたい、今まで生きてきて初めて芽生えた感情に戸惑った。

｢せっかく楽しい場所なのに空気悪くしちゃった。ごめんね」

そんなこと気にしないでいいよって俺が言いたい言葉を｢お前は今は黙っとけ」と言わんばかりにジェノが言う。

｢Aちゃんの事何も知らないけど、Aちゃんは幸せになれる人だよ。自分に好意を向けてくれる人を大切にしないと、」
｢彼氏、って存在を作っちゃうと終わりが来るじゃん」
｢そんな事気にしてたらAちゃん、ずっと幸せになれないよ。ね？ジェミン」

｢…うん」

彼女にしたいと、生まれて初めて感じたAちゃんは俺には難易度が少し高い様に感じた。それと同時に、Aちゃんが寂しいと感じる時間を俺が埋めてあげたいと思った。

｢Aちゃん、いい子じゃん。頑張ってみたら？」

Aちゃんをタクシーに乗せた後、彼女が乗ったタクシーを眺めていると後ろから聞こえてきたその言葉。最初は刺々しかったジェノのその一言が俺の背中を押してくれた気がした。Aちゃんを幸せにしたいと思った。

Aちゃんと幸せになりたいと思った。