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『…生きてる』
手のひら越しに伝わる振動は紛れもなく生きていることの証だ。
海水で濡れた制服をたくしあげると、胸の間には今までなかった傷跡__丁度、宿儺に貫かれた箇所を無理矢理塞いだような痕ができていた。
取られたはずの心臓が動いているのは、件が反転術式で治してくれたおかげだろうか。
__生きているのだと分かれば、やることは定まってくる。
次に上がってくる問題は、ここがどこかということだ。
私がいた渋谷は海が近くにあるような場所ではなかったし、まるで流れ着いたように岸にいるのもおかしい。
術者の領域内のような嫌な呪力の気配は感じられず、私はヒントを掴もうと周囲を見渡す。
『?英語だ…いや、こっちは日本語…?』
漂着したらしい書物を手に取る。
その傍にはすっかり文字の滲んだ新聞が打ち上げられていて、それに記された文字は見慣れた日本語。まだ原型を留めている大見出しには《天_人、__国へ外遊!!》と大体的に報じられていた。
滲みが酷く特にわかる情報がないので、すぐにその新聞をぽいと投げ捨て代わりに本のページを捲った。しかしそれはどこかの国の見たこともないおとぎ話しか載っておらず、他になにかないかと思っていたところであるものが目に止まる。
『《History of Pirates》…海賊の歴史?』
どうやら漂流物に紛れて捨てられただけの本は海賊について特筆された随分とマニアックな品物で、私はパラパラと目を通すだけ通してみる。
けれど随分と入念に作り込まれたその本に連ねられた名前は、いずれも私達が聞いた事のない名前ばかりで。
『ゴールド・ロジャー…海賊王…』
一際目立ったその名前にも見覚えはない。
精悍な顔付きに立派な髭が特徴的なその男は、挑戦的な笑みを浮かべ本の中に佇んでいた。
彼の名前が記された後には、数人の海賊の名前が載っているのみ。
《大海賊時代の幕開け》__そう締めくくられたこの本はページも黄ばんでおらずまだ新しい。
いつ出版されたのだろうかと一番最後のページを開いて、驚いた。
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改革 - 面白かったです。イラストも綺麗で感動しました (4月18日 9時) (レス) @page50 id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なぎしば | 作成日時:2022年12月26日 21時