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「いいの？」
『うん。貴重な週末だし、ホソクがいいならだけど』
「全然！むしろそっちのが時間取れるしありがたいよ」
ホソクの顔色を伺いながら問えば、返ってくるのは人のいい笑み。
裏の意図など感じさせないような快活な笑顔を見て、
Aのよく知っている彼の笑顔と比べる。
綺麗に持ち上がった口角とぷっくり浮かぶ涙袋が重なって、
けれどその笑みはジミンにとっての作り笑いで。
『…違うよね』
口の中だけで発された言葉はホソクに届かず、彼女はただ首を振った。
いくら身近なジミンがそうだと言っても、全ての人が同じな訳では無い。
ジミンを基準にするのは違う。
「じゃあ、明日行こっか。行きたいとこある？」
『ううん、ホソクに任せるよ』
「わかった」と頷いて立ち上がった彼は、おそらく昼食を取りに出かけるのだろう。
Aも時間を確認してから自分も昼食を取ろうと弁当を取り出し椅子に座り直す。
その時、悪戯な好奇心が勝って、一瞬だけとジミンの方へ目を向けた。
「＿＿＿」
ずっとこっちを見ていたのか、すぐにジミンの黒瞳に射抜かれ、
Aは自分の安易な行動を後悔した。
蛇に睨まれた蛙のように動けなくなり、息を飲む。
しかし今回先に視線を外したのは彼の方で、
その拘束から解放された瞬間肩から力が抜けた。
それと同時に襲ってきた虚脱感は、
《あのジミンに無視された》という身勝手な被害妄想に寄って胸に居残り続ける。
彼の白く小さな手が、申し訳程度に色の抜かれた髪をかきあげる。
再び持ち上げられた視線は彼女の方を向くことはなく、
ジミンに話しかけた女性社員へと注がれた。
『…』
何気ないはずの一連の動作が、
まるで仕返しだとジミンに咎められているようで
Aは食事を取らずに席を立った。
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作者名：なぎしば | 作成日時：2022年1月21日 16時
