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＿＿＿もしかしたら、と期待してしまう自分がいた。
付き合っている間、彼女の視線は確かに自分に向けられていた。
けれど、いつも彼女の意識の端にはアイツの存在があって。
手を繋いでいても、
キスをしているときも、
抱きしめているときも、
愛を確かめあっているときでさえ、
彼女の全てが自分のモノなのだと言いきれる自信がなかった。
それを否定するために彼女の全てを自分の元に閉じ込めてしまえば、
彼女がアイツの大切さに気づいてしまう気がして、それも怖かった。
彼女の《愛してる》に嘘はない。
けれど、《愛してる》の一番は自分じゃない。
彼女が一番の存在に気づく前なら、
もし気づいていないとしたら、
取り返せるかもしれないと期待した自分が馬鹿だった。
とっくに彼女は、パク・ジミンの色に染められていたのだ。
パク・ジミン程手を回すのが速い男はいない。
彼女の真っ黒な瞳を見て、そう思った。
彼女の視線から抜け落ちた、
かつて自分に向けられていたはずの愛情の矛先は変わってしまっていた。
＿＿＿もしかしたら、Aの愛情が自分にまっすぐ向いていた、
というのも幻想だったのかも知れないが。
パラノイアだけが生き残る。
ジミンは、ただ彼の根本にある心配性だけであそこまで行動できた。
Aが自分のものになるように。
保険に保険を重ねて、
準備に準備を重ねて、
時間をかけて、
心配性という理由を盾に彼女の隣を守り続ける。
彼のその徹底さは偏執的で、
彼ほどにパラノイアという言葉が当てはまる男性はそういないだろう。
ジョングクが彼女を手放した瞬間、
ずっと早く手を回したパク・ジミンに最早ジョングクは笑うことしかできなかった。
「怖いなぁ」
最後に見たあの黒の瞳を思い出して、ぞっと身震いをひとつした。
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作者名：なぎしば | 作成日時：2022年1月21日 16時
