パラノイア【JM】 (ページ23)

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「知ってる」

持ち上げられた口端にいつもの可愛げはない。

ただただその場の居心地の悪さにAは時間が過ぎ、
ジョングクの許しが降りることを待ち続けた。

「…ね、ヌナ」

僅かな沈黙の後、一度彼の瞳が伏せられる。

そして開かれた黒瞳は、何かと重なった。

「ジミ＿＿＿」

「＿＿＿何してるの～、ヌナ」

ジョングクの血色のいい唇が言葉を象ろうとした瞬間、
ふわりと嗅ぎなれた匂いが鼻腔を掠めた。

甘い、けれど女性物とは違うこの香水の匂いには心当たりがある。

今すぐにジョングクから目を逸らしたくて声の方に振り向けば、
少し動けば触れてしまうほどの距離に特徴的な唇があった。

『じ、みん』

「机の上にお弁当置きっぱなしのまま帰ってこないからさ、心配したんだよ？」

柔らかく笑んだジミンの表情に安心して、肩からずっと入っていた力が抜ける。

見慣れた彼の黒瞳を視界に入れて、ああ、これだ、と何かが自分の中にすとんと落ちた。

黒は、何もかもを塗り潰す。

例えその裏に美しいものがあろうと、醜いものがあろうと。

覆い隠して、底に沈めて、なかったことにして、知らんぷりをする。

それが得意な黒を、ジミンもジョングクも飼いならしていたのだ。

「…パク・ジミン先輩」

「…君がジョングクだよね？ヌナに何か用？」

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