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心配性といえば彼が思い浮かんでしまうのは仕方がなかった。
だって、Aは小さい頃からずっと
彼の行き過ぎた心配性を《かわいいから仕方がない》という、
理由になっていない理由で許してきたのだから。
確かに彼は心配性である節があるが、病的、という程では無い。
ただ一般の、家族愛程度の心配にとどまる具合のものだ。
仮に、ジョングクが本当にジミンのことを指しているのだとしたら悪趣味である。
彼がジミンのことをよく思っていないのは薄々気付いていたが、
そこまで言われる筋合いは無いだろう。
それに、ジョングクとジミンははっきりとした繋がりがない。
二人の関わりも見た事がないし、
彼女たちが交際している間もジミンは節度を弁えて
干渉しないようにしてくれていたはずだ。
「___偏執病、妄想病」
『…?』
「パラノイアの別名。あとは、《独裁者の病気》とかも」
つらつらと言葉を並べていく中、ジョングクの視線はAから逸らされない。
ただまっすぐ彼女を見つめて、首を傾げた。
丸いその瞳は吸い込まれそうで、その黒が、執拗にAを追いかけてくる。
「ずっと可哀想なのはヌナだけだと思ってたけど、違うみたいだね」
『…本当に何が言いたいの?』
回りくどい彼の言葉にAは答えて欲しくて、
けれど意図の見えないそれに気味悪さを感じて少し身を引きながら問う。
それにジョングクはただ満足気に笑って、「何も?」と答えた。
「ただちょっと、嫌がらせしに来たの」
『は?それだけのために呼び出したの?』
徐々に熱がこもる彼女の声に、ジョングクは目を細め愛おしかった女性を見つめる。
「…冗談だよ」
静かに零れた言葉は反響して、溶け込むようにAの耳朶を震わせた。
「ヌナ、大好きだったんだよ、本当に」
動揺を隠せず揺れた彼女の瞳孔に、自分の笑みが深まっていくのが分かった。
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作者名:なぎしば | 作成日時:2022年1月21日 16時