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『…それが聞きたくて呼んだの?』
突拍子のないジョングクの言葉に訝しげに眉根を寄せたA。
彼はその質問に答えることはなく、ただ黙ってこちらを見下ろしてきた。
無意識なのか、少しぷくりとふくらんだ頬は彼が機嫌が悪い時の証拠。
何故彼がこんなに機嫌が悪いのか分からない。
ただ、これ以上彼がへそを曲げてしまえば面倒なことになることは分かっていた。
『…それは、知ってるけど。確か、アンドリュー・バレーの言葉でしょ?』
シリコンバレーの有名な実業家である彼の著書は、一冊だけだが読んだことがある。
《パラノイアだけが生き残る》は、彼が残した有名な言葉のひとつだったはずだ。
彼の理念には納得出来る部分が多く、
新人だった頃はよく参考として恐れ多くもロールモデルにしていた人物だった。
そして、確かその言葉の意味は___
「じゃあ、《パラノイア》っていう病気は?」
しかし答えを出す前に、ジョングクが新たな問いをかぶせてくる。
恐らくAの口ぶりから知っていることを察したのか、
その質問自体に大した意味はなかったのか。
いずれにせよ、その態度は失礼にあたるのではないだろうか。
いくら元恋人と言えども、礼節ぐらいは弁えて欲しい。
生意気な彼の様子に不機嫌を隠すこともせず、
彼女は『何が言いたいの?』とわずかな抵抗に質問で返す。
「答えて。知ってる?」
『…知らないけど、病気は』
ため息と共に返せば、ジョングクは満足したように一度頷いた。
僅かに緩んだ彼の頬に疑問が募る。
彼が、何を考えているのか。
『パラノイアって、《病的なまでの心配性》っていう意味じゃないの』
そこまで口にして、気付いた。
『…ジミンのことが言いたいの?』
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作者名:なぎしば | 作成日時:2022年1月21日 16時