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冷たいものが、頬を伝う感覚で目が覚めた。
重たい瞼は開けずに、ただ感触だけを頼りに肌を撫でてその正体を確かめる。
瞳から零れた水滴は、輪郭に合わせて滑らかな弧を描いて枕に落ちていた。
寝ながら泣いていたのかと、段々と覚醒してきた意識の中で理解する。
そしてゆっくりとまぶたを持ち上げて、いつもの天井を視界に入れた。
それになぜかひどく安心してしまう。
胸の中に僅かに残る喪失感を無理やり埋めるようにぎゅっと目を瞑り、
そのまま込み上げてきた欠伸をこぼす。
再び流れた涙は生理的なもので、ゆっくりと一度できた軌跡を辿るようにして頬を伝った。
なにか悲しい夢でも見ていたのか、と思い出そうとするが、全く思い出せない。
霧にかかったようにぼんやりとしたそれは、
もうきっと捕まえることが出来ないだろう。
そうそうに着いた諦めは逃避になるのだろうか＿＿＿いつもは考えないような、
センチメンタルな方向にまで回ってしまう頭に、疲れているのだと結論付ける。
視界に入る位置にあった壁掛けカレンダーに刻まれた
今日の曜日を見て安心して、再び眠りにつこうと目を瞑った。
＿＿＿その瞬間、腹を撫でられる感覚。
びくりと身体を震わせ、一気に意識が覚醒した。
未だモゾモゾと腹を撫でるように動くのは、
布団の中では生ぬるく感じる、柔らかい、まるで人肌のような。
『＿＿＿え？』
ぐりんと首をもたげた先の視界に映ったのは、見慣れすぎた顔。
なんなら、昨日の夜一緒にいたような気がする。
ぴくりと動いたひよこのような唇に続くようにして、目がゆっくりと開かれた。
真っ黒な、腫れぼったいその目の持ち主は。
「＿＿＿おはよ、ヌナ」
目を細めてふにゃりと微笑んだジミンに、
再び擦り寄ってきた手のひらを思い切り叩き落としてしまった。
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作者名：なぎしば | 作成日時：2022年1月21日 16時
