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Dream ページ12

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いつだったかの、記憶。







『ジミナ、あのね』







テレビのニュースが流れ続けるリビングで、肩を並べてペンを走らせる二人。

一人は《高等学校用》と印字されたテキストを広げ、
もう一人は中学校名の書かれたテスト用紙に目を通している。

ジミンは、年内最後の考査が終わってから一週間が経ち、高校受験を目前に控えていた。

そしてそのための勉強会と称して集まった今日、
Aは彼の手が止まったのを見てから
自分もゆっくりと音を立てないようにペンを置いた。







『私、彼氏できたんだ』








高校では運動部に入ることを選ばなかったAの白い肌に僅かに色が帯び、
彼女はゆるゆると微笑を浮かべた。





高校一年生___少女と、女性の狭間にいる彼女の笑みはまだ幼くも、大人びている。

その限られた期間は、貴重なもので、とても美しい。

ジミンは眩しいものを見るかのように目を細め、
自分より先に大人へと移り変わっていってしまう彼女から視線を外した。






「…そっか」






素っ気ない相槌には僅かに置いていかれる悲しみの陰りが差し、
けれどそれを覆い隠すように視線を戻す。







「良かったね」







ほとんど自然に零れたその言葉にAは数度目を瞬く。

あまりに自然すぎて、取ってつけたような彼の言葉に感じた違和感に首を傾げつつ、
それを明確なものにはできなかった。






『…ヌナは、彼氏が出来たからってジミナのこと放ったらかしたりしないよ』







猫を被らなくなった彼は、それでもAにとってはかわいいままだった。

今この瞬間だって、
まるで小さな子供に言い聞かせるかのように首を傾げながら彼の顔を覗き込む。

驚いた表情を見せたジミンは、
自分を真っ直ぐと見つめてくる彼女にぷいと顔を逸らした。








「もう子供じゃないんだから、子供扱いしないで」

『え〜、私からしたらまだかわいいよ?』

「うるさい。かわいいって言われても嬉しくない」

『どの口が言ってんの』









普段はぶりっ子してるくせに、と彼の餅のような頬をつまめば、
彼は顔を顰めて「やめて」と身を捩る。



いつの間にか身長が追い抜かされても、心の距離は変わらない。

いつだってAは受動的で、その上二人の間に年齢という壁を作ってくる。




____たった一歳差。




大きくはないその壁を、彼女はいとも容易く厚くしてしまう。

だからこそ馬鹿で無防備なヌナに、
ジミンはただ《心配だから》という大義名分で寄り添うしかないのだった。












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作者名:なぎしば | 作成日時:2022年1月21日 16時

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