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「___ちょっと、ヌナ。
飲みすぎだって」
『いいの、今日ぐらい。
どうせ明日休みだし』
「潰れたヌナを運ぶのは僕なんだけど?」
アルコールが回って揺れる視界に映る、
呆れたような目をした男性。
重い瞼は伏せがちで、
それでも大きな瞳からは柔らかさが滲み出ている。
どこにでもある、
会社帰りのサラリーマンで賑わう大衆居酒屋の中で、
Aは古くからの付き合いがあるジミンと肩を並べ日々の鬱憤を晴らしていた。
と言っても、大半は先日別れたばかりの彼氏の愚痴がほとんどなのだが。
空になったジョッキを木目の目立つカウンターに置き、
滴り落ちる結露を指でなぞった。
ジミンの話を聞く気がないAに彼は溜息をつき、
通りがかった店員に「水追加で」と注文をつける。
隣でぐずるように身を捩った己のヌナに当たる人物を見てから、
自分のジョッキも飲み干した。
「ヌナはさ、男見る目ないよね」
『…そんなことない』
「じゃあ男に夢を抱きすぎ」
『……あの人は本当に完璧だと思ったの』
「それがダメなんでしょ」
互いに目を合わせずに言葉を交わす。
けれど二人の脳裏に共通で浮かぶのは、
流行りを取り入れたセンターパートが似合っていた、
丸い大きな目が特徴的な男性。
言わずもがな、Aの元彼である。
『仕事も出来て顔も良くて背も高くて運動神経もいい。
…非の打ち所がなくない?』
「でも現に別れてるじゃん」
『だってさぁ〜』
ごん、と豪快な音を立ててカウンターに頭をぶつける。
そのまま首をぐりん、と回し隣でつまみの枝豆を貪るジミンに、
的外れな恨みがましい視線を向けた。
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作者名:なぎしば | 作成日時:2022年1月21日 16時