＿ ページ20
．
ジミンの、
ユンギさんに負けないほど
白い綺麗な手が絵の縁をなぞる。
いくつもの色を重ねた跡、
細く繊細な筆跡が、
素人目に見ても私が
その絵に執着していることは
見て取れただろう。
伏せられた瞳が再び開かれ、
幼馴染がこちらを向く。
いい意味でも悪い意味でも
感情が表に出やすいジミンのことだから、
こちらを見つめる表情だけで
何が言いたいのか理解してしまった。
「ヌナ＿＿＿」
『＿＿ごめんね、ジミナ』
幼馴染だからこそ分かることがある。
幼馴染だからこそ分からないことがある。
それは、きっと辛いことだから。
誰も幸せにならない決断をする私を、
ジミンは責めるだろうか。
『これはヌナの話だから。
…何も、言わないで』
絞り出したような私の声は震えていた。
辛いと、
助けてと
言っているようなものだ。
何も話さないくせに助けてなんて、
傲慢がすぎるけれど。
瞳に込み上げてきた温かいものに、
私は顔を伏せた。
嗚咽を噛み殺すように
口に手を当てれば、
頭に柔らかい感触がして、
すぐに引き寄せられる様にして
硬い何かに包まれ＿＿＿ジミンに、
抱き締められた。
私よりも小さかったはずの手は
いつの間にか私の頭を
包めるくらいに大きくなって、
懐かしい匂いに
年甲斐もなくすがりついた。
ジミンの服を濡らすことに
罪悪感を覚えつつも、手放せない。
ごめんね、ジミナ。
頼りない、最低なヌナで。
「…素敵な人だね」
私の鼻を啜る音が響く中で、
ジミンが呟いた。
私はそれに大きく頷く。
ユンギさんと離れて二ヶ月、
二十数回目の、春が訪れた。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 174人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なぎしば | 作成日時：2021年12月2日 21時
