恋 ページ18
．
「お邪魔しまーす」
扉が閉まる音と共に
フローリングがぎし、
と歪んだ音を立てる。
私は招き入れた彼を
一度見てから玄関に鍵をかけ、
「久しぶりだね」
とその背中に声を掛けた。
「そうだねぇ、
二年ぶりくらい？」
『売れ始めた頃だから、
それくらいかな』
にっこりと、
可愛らしい笑みを向ける彼は
私の幼馴染のパク・ジミン。
部屋を見回してから、
他の男性よりも幾分か高い声で
「変わらないね」
とこぼす彼は二年前より
大人に近づいた気がする。
『ジミニ、
コーヒーでいい？』
「うん、あ、
ミルクもいれてね」
簡易キッチンに向かい、
真っ白なマグカップを取り出す。
時々感嘆の声を上げながら
アトリエを見て回るジミンは、
初めて美術館に来た少年のようだった。
先日いきなり
《月曜日そっち行くから》
とカトクが送られてきての、今日。
昔からイタズラなどを
仕掛けてくる
突拍子のない子だったが、
もし今日私に予定が入ってたら
どうするつもりだったのか。
確かに昔から
友人の少なかった私ではあるが、
一応は社会人。
けれど愛らしい彼の顔を
見てしまえば怒る気も
失せてしまうもので。
『はい、どうぞ』
「ヌナ、ありがと」
笑うとキュッと細まる目元は変わらない。
さりげなくアトリエで
一番いい椅子を陣取っているジミンに
突っ込むこともせず、
自分は手近な椅子を引き寄せ
彼の隣に腰かけた。
『外寒かった？』
「風が凄かったよ、
びゅうびゅう言っててさ。
もう春なのにね」
『まあ、
今日は特別寒かったみたいだし』
小さな窓を覗くと、
そこから芽吹き始めた緑が見える。
寒暖差の激しい季節の変わり目は
風邪をひきやすい。
暖かいカップを両手で握って
幸せそうな顔をするジミンに、
私も柔らかく微笑んだ。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 174人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なぎしば | 作成日時：2021年12月2日 21時
