油彩画【YG】 (ページ13)

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＿ページ13

．

意識の端で、音が聞こえる。

やがてそれは鮮明になってきて
＿＿＿スマホが振動しているのだと、
やっと気付いた。

まだ寝ぼけた意識のまま
スマホを手に取れば、
今目の前の絵の中で佇んでいる
彼の名前が。

『え、ど、どうしよ』

無論、着信拒否など
出来るわけがないのだが、
寝起きの思考は正常に回らない。

恐る恐る応答ボタンに
指を向けるが、
心の準備が出来ているかと
言われればNOと答える。

しかし、ユンギさんから
電話がかかってくる可能性が
今後確実にあるとも保証できない。

切れてしまう前に、
と思い切って携帯を耳に当てた。

『…ヨボセヨ？』

「A？

今大丈夫か？」

緊張から変に上擦ってしまった声。

カッと自分の耳に
熱が帯びるのがわかったが、
電話越しのユンギさんは何も反応しない。

バレなくてよかった、
と安心もするが、
同時に慣れない異性からの呼び方に
心臓が鷲掴みされたような感覚がする。

『今、大丈夫。

どうしたの？』

突然の電話。

きっとなにか大事な用事に違いない。

そう思って、
期待してしまう自分の気持ちを
飲み下した。

「＿＿＿来週って空いてる？」

最近、

これが自分の人生の

最高潮ではないかと、

つくづく思う。

．