一人、泣く ページ24
『____ごめん、鳴女。
助かった』
「______」
『………心配しなくても、平気』
「ありがとう」、そう言って無限城に転送してくれた鳴女に背を向けた。
目を見ることができない彼女でも、雰囲気から心配してくれていることがわかる。
鳴女だけは、ずっと無限城にいたから緋翠の存在を知っていた。
故に、緋翠は彼女の優しい性格も理解していた。
『………部屋、誰も入れないで』
「______」
鳴女がこくりと頷いた。
そして、何時もの通り琵琶を鳴らして部屋を移動させてくれる___
「____大丈夫?」
『____?』
普段話さない鳴女が放ったその一言に、緋翠は思わず振り返る。
其処には、琵琶に手を置き心配そうに首を傾げながら此方を見る鳴女がいた。
____心配してくれたんだ。
鳴女は、彼女だけは、緋翠が血鬼術を使っている時の様子を知っていた。
毎回、苦しげに自分を殺して。
鬼でも許容しかねる様な音をさせてまで、体を治しているのも。
全部、黙って無惨にも言わずに見ていてくれた。
そして、心配してくれているのだ。
緋翠は自然と頰が緩むのを感じた。
かすかな微笑を浮かべ、鳴女を真っ直ぐにその韓紅の瞳に映す。
『………大丈夫。
ありがとう、鳴女』
「………良かった」
鳴女のその言葉を最後に、琵琶の音がなり景色が変わる。
襖の全て閉められた部屋に移動させられた緋翠は、目を瞑り、その場に座った。
『血鬼術 彼岸花、シビト花』
瞬間、元々治りきっていなかった皮膚が大きく裂ける。
黒の着物に血が染みて、布が赤黒く染まった。
『グ、アアアァァァァッ!!』
ビリビリ、と言う音と共に緋翠の悲鳴が閉め切られた部屋に木霊する。
思わず白目を向いてしまう様な痛みに、緋翠は地面に転がった。
皮膚が裂け、段々と中の肉も裂けていき、全身の細胞が緋翠を壊そうと共鳴する。
耐え難い痛みに緋翠は口の端から血の混じった唾液を垂らし、それに伴い血の涙も流す。
全身が血に濡れていく感覚を不快に感じながらも、激痛の所為で其れを拭い去る事が出来ない。
『ァァアア、ッアア』
身体が痙攣して来て、身体が冷えて来た。
血が足りなくなったのだ。
緋翠は、慣れたくても慣れられない___否、慣れたくないだけのその感覚に、喘ぐ様に息をする。
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Cynic** - 覇戮さん» コメントありがとうございます。返信滅茶苦茶遅れてしまってすみません…ずっと書きたくて、書いてる時も楽しかった私も大好きな作品です。殆ど自己満足に近かったのに、沢山の方に読んで頂き評価をもらえて私もとても嬉しいです。温かいお言葉ありがとうございます! (2020年7月3日 22時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
覇戮 - 完結おめでとうございます。とても良い作品で涙が出てきました。応援してます! (2020年5月20日 14時) (レス) id: 193145533a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Cynic** | 作成日時:2020年2月16日 15時