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《私》を殺して ページ23

柱は、思わず息を呑む。

幼い容姿にそぐわぬ、その上弦の零の称号、儚げな笑み、そして背負っているもの。

鬼は確かにそこに存在しているが、まるで只の人間である様にも見せるその鬼。

柱の脳内で、緋翠の放った言葉が反芻される。

そして、男は言葉を放った。









「………太陽の下でも、歩きてぇのかィ?」









緋翠は男が意外にもしっかりと話を聞いてくれていた事に驚きつつも、首を横に振って答える。









『私ね、好きな人がいるの』









「鬼が恋ィ?
笑わせんなよ、人を喰った手前らには幸せになる権利なんざねぇんだよォ」









『………私だって、そう思ってる。
鬼が……幸せになる権利なんてないって』









緋翠は、未だに傷の塞がらない腕を月にかざし、流れる血を舐めとる。

そして自嘲気味に笑った。









『だから、私は無惨が殺されたら、他の鬼も全員殺して死ぬつもり。
それが、鬼として____零として、人に出来る最後の償い。
それが免罪符になるとしたら、簡単過ぎて笑える話だけれどね』









「無惨が死んだら私達はもうこの世にいないと思うけど」と言ってから、緋翠は立ち上がった。

そして立ち去ろうとする緋翠に、柱は声をかける。









「………手前、俺を殺さねぇのかァ?」









『………殺して欲しいの?』









男はそう問われ、首を横に振る。

そして、挑発するように笑って言った。









「俺が死ぬのは、手前を殺してからだァ」









『………そう』









緋翠は、森を背にして柱に言った。

柱の男には、月明かりのお陰で緋翠の顔がよく見えた。









『………気分じゃないから。
見逃してあげる。
だから__』









「______ッ」









『………だから、いつか必ず。






____()を殺しに来てね』









そう言って、笑って緋翠は森に吸い込まれる様にして消えた。

最後に緋翠の顔を見た柱は____不死川実弥は、自分の鼓動が尋常ではない程早く動いているのを感じた。

それもそうだろう、何せ____









____不死川が最後に見た緋翠の目には、上弦なんて忌々しい文字は消え去って、人の持つ目に変わっていたのだから。

一人、泣く→←葉見ズ花見ズ



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Cynic** - 覇戮さん» コメントありがとうございます。返信滅茶苦茶遅れてしまってすみません…ずっと書きたくて、書いてる時も楽しかった私も大好きな作品です。殆ど自己満足に近かったのに、沢山の方に読んで頂き評価をもらえて私もとても嬉しいです。温かいお言葉ありがとうございます! (2020年7月3日 22時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
覇戮 - 完結おめでとうございます。とても良い作品で涙が出てきました。応援してます! (2020年5月20日 14時) (レス) id: 193145533a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Cynic** | 作成日時:2020年2月16日 15時

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