置いていかれた鬼っ子ちゃん ページ3
「____おい、緋翠」
『______』
「おい」
『______』
「殺すぞ」
『………………許さないから』
「………何がしたいんだ」
「いやあ、可愛いねえ」
物語開始早々から喧嘩を始めた二人。
その様子をニマニマと見つめる童磨。
その場に一緒にいた猗窩座と黒死牟は無言で目を合わせ、そっと目を背けた。
無惨に背を向けて立つのは、白髪に赤目の特徴的な幼女。
幼い顔立ちに不相応な雰囲気を纏う彼女は今、全力で不機嫌を表していた。
何とか緋翠の機嫌を取ろうとする無惨を見て、童磨は疑問を持つ。
「あれ、無惨様って確か心の中お読みになられますよね。
分からないのですか?」
「何を___」
『無惨、私の心だけは読めないの。
何でだろうね』
「……貴様が何か変な事をしているのだろう」
『そんな面倒臭いことしない。
………ほら、ずっとそんなんだから、今私がして欲しいことも当てられないんだよ』
そう言って再び無惨から顔を背ける緋翠。
無惨は荒々しく舌打ちをし、「言ってみろ」と言った。
無惨は相手の心を読むことが可能だが、何故だか緋翠の心情だけは読めないのだ。
それは、緋翠が何か予防線を張っているからか、若しくは。
『____今日、一緒に寝てよ』
「____は?」
緋翠の予想外の言葉に無惨は思わずその言葉しか出なかった。
彼女は不機嫌そうに唇を窄め、「だから」と前置きしてから続ける。
『今日、一緒に寝てってば。
無惨が約束の日になっても帰って来なくって寂しかったの。いいでしょう、今日一日ぐらい』
「却下する」
「何で」と眉を釣り上げ怒りを露わにする緋翠に無惨は無視を決め込んだ。
ぽかぽかとひたすら無惨を殴り続ける彼女に無惨は溜息を一つ零し、「鳴女」と呟いてその場から消える。
『逃げるな!
鳴女、私も無惨のとこに連れてって』
緋翠がそう叫んでも、すぐに反応する琵琶の音は今回は聞こえない。
鳴女がこの声を無視するはずはないので、恐らく無惨に止められているのだろう。
無惨に置いていかれた事を滅多に動かない表情筋の下に隠しながら怒る。
そして、俯いて呟くのだった。
『無惨の馬鹿。
………折角、久し振りに逢えたのに』
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Cynic** - 覇戮さん» コメントありがとうございます。返信滅茶苦茶遅れてしまってすみません…ずっと書きたくて、書いてる時も楽しかった私も大好きな作品です。殆ど自己満足に近かったのに、沢山の方に読んで頂き評価をもらえて私もとても嬉しいです。温かいお言葉ありがとうございます! (2020年7月3日 22時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
覇戮 - 完結おめでとうございます。とても良い作品で涙が出てきました。応援してます! (2020年5月20日 14時) (レス) id: 193145533a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Cynic** | 作成日時:2020年2月16日 15時