初見の上弦 ページ20
一年に一度、緋翠が人を喰らう為に里に降りる日がある。
それが、今日。
「____ァァアアア!
助けてくれェ!」
「ば、化け物だ!」
『______』
男達の逃げ惑う声、断末魔が森に木霊し、木々が震える。
緋翠はそんな悲鳴を気にも止めず、ただ冷徹に腕を振るい人の命を狩っていく。
ぺキャ、バキ、と許容し難い音が響き、その音を気にした者も同じ目に遭い、無視した者だけが生き残る。
只管咀嚼を続ける緋翠は、ふと稀血の匂いがすることに気付いた。
そして、手を止め立ち上がる。
「____風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ」
特徴的な呼吸音と共に来た、風の様に早く荒々しい一撃。
思わず目を見開くが、すぐに反応し後ろに跳躍。
攻撃を躱し、着物の裾で血に汚れた口元を拭う。
森の陰から現れたのは、傷だらけの男。
雰囲気からして柱だろうか。
少なくとも強い筈だ。
たすきがけをして、男の前に立つ。
「あァ?
なんだ、餓鬼の鬼かィ」
『………面倒臭い』
男が放つ斬撃を避け、瞬きのうちに男に近付く。
そして、鋭く蹴りを放った。
「ッぶねェ!」
『………チッ』
男が避けたのを見て、男の間合いから離れる。
そして男の次の攻撃に備えて低く構えた。
「風の呼吸 伍ノ型 木枯らし颪」
『____ッシ!』
この攻撃も跳躍して回避。
男が地上からこちらを狙ってくる。
それに宙を蹴り、一気に詰め寄った。
『____とっとと、死んで』
接近してくる緋翠と目が合い、男の目が見開かれる。
「上弦の、零?!」
一般隊士だったら一瞬で緋翠に殺されていただろうから、この男は恐らく柱だ。
いや、寧ろ柱でもかなり強い方だ。
その柱の命も此処で奪われるのだが。
“____緋翠、お前は余り動くな。特に、血鬼術を使う前は”
無惨に言われた事を思い出した。
無惨に鬼の細胞の事を言った何日か後、彼なりの配慮だろうか、そう言ってくれた。
そして今日。
年に一度の人を喰らう日。
要するに、血鬼術を使う日。
その前に、戦闘を起こせばどうなるか。
それは、目に見えていた。
『____ゴハッ』
視界が、赤く染まった。
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Cynic** - 覇戮さん» コメントありがとうございます。返信滅茶苦茶遅れてしまってすみません…ずっと書きたくて、書いてる時も楽しかった私も大好きな作品です。殆ど自己満足に近かったのに、沢山の方に読んで頂き評価をもらえて私もとても嬉しいです。温かいお言葉ありがとうございます! (2020年7月3日 22時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
覇戮 - 完結おめでとうございます。とても良い作品で涙が出てきました。応援してます! (2020年5月20日 14時) (レス) id: 193145533a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Cynic** | 作成日時:2020年2月16日 15時