零の呪い ページ17
『____無惨に、話しておきたい事がある』
無惨は緋翠の言葉を受け止め、微かに首を動かした。
ありがとう、と心の中で呟き、最初に何を話そうか、と思考を巡らせる。
瞬きをした時には彼なりの配慮なのだろうか、空間が入れ替わっており、八畳ほどの狭い空間に移されていた。
『私は……かなり小さな時に鬼になった』
鬼になって目が覚めたとき、目の前には無惨がいて、この城の中の一室に私を眠らせてくれていた。
『………無惨が私にくれた血の量は、かなり多かったでしょう』
意識がない中でも、ずっと苦しかったのを覚えている。
『私の細胞は、無意識にその血をずっと拒んでて……全然鬼になれなくて』
鬼になっても細胞が無惨の血を受け付けず、終わらない苦しみに全身から血が出る程身体をかきむしった。
『漸と、完全に鬼になれた時とっても嬉しかったの、覚えてる』
苦しみから解放されたあの瞬間。
泣きたくなる程嬉しかった。
『でも………それでも私の体は小さかったから、結局その血に耐えられてなくて』
それは、前触れもなく訪れた。
唐突に。
『____無惨がいない時、私は一度死んだ』
「____は」
無惨が驚いている。
無惨の目を再度見て、緋翠は微笑む。
『時間が立つにつれて、段々と血に耐えきれなくなって細胞が壊れたの』
誰もいない空間で、全身から血が吹き出て鬼には来ないはずのその程度での傷による死。
『____それが、私にとっての呪いだった』
自分には無惨の呪いが付かないが、時間制限という呪い。
『私は………もっと生きていたくて。
自分の血鬼術を自分で組み立て直して、もう一度生き返った』
鬼の中でも類稀なる才能を身につけた緋翠。
それは無惨の血によるものも多かったが、緋翠自身の才覚の表れでもあった。
『十二回目の満月の夜。
私がその日だけ人を食べて、血鬼術を使う日』
一年に一回、緋翠は人を食べ続けた。
何時もは人を喰わずとも生き長らえる事が可能な、緋翠が唯一人を喰らう日。
全ては、血鬼術を使って命を保持する為。
『私は時間制限が来る前に、自分で自分の細胞を破壊して、私の血鬼術で再生してるの』
そこまで話した緋翠は、緋の瞳に深い闇を宿していた。
58人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Cynic** - 覇戮さん» コメントありがとうございます。返信滅茶苦茶遅れてしまってすみません…ずっと書きたくて、書いてる時も楽しかった私も大好きな作品です。殆ど自己満足に近かったのに、沢山の方に読んで頂き評価をもらえて私もとても嬉しいです。温かいお言葉ありがとうございます! (2020年7月3日 22時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
覇戮 - 完結おめでとうございます。とても良い作品で涙が出てきました。応援してます! (2020年5月20日 14時) (レス) id: 193145533a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Cynic** | 作成日時:2020年2月16日 15時