彼奴は負けていた ページ11
『____折角、猗窩座と甘味を食べていたのに』
「黙れ、私の質問に答えろ」
『だから、先刻から答えてるじゃん』
「私が聞いているのは、《何故猗窩座が柱を殺そうとしているのにそれを妨害したか》だ。
貴様の実力の話などしていない」
『………柱一人ぐらい、私だけで直ぐに殺せる』
無限城の比較的豪華な部屋。
其処には湯呑みを持った緋翠と、彼女を見下ろすようにして立つ無惨。
緋翠は茶を口に含み、こくん、と可愛らしく喉を鳴らす。
そして、先程からの無惨の質問に目を伏せてから答えた。
『………あの戦いは猗窩座の負け。
たった一人の柱も上弦の分際で殺せず、しかも一般隊士さえ殺せなかった。
あの状況で、柱を殺しても、一般隊士を全員守り抜かれたんだ…
完全に…猗窩座の負け。
例え、柱を殺していたとしてもね』
「………お前は鬼の癖に優し過ぎる」
無惨の小さなその一言に、緋翠は己の形のいい眉をぴくりと動かし答えた。
『優しくなんかない。
………私は今、猗窩座に怒ってる。
自分の私欲を満たすのを駄目とは言わないけど……折角柱に会えた機会、直ぐに殺さなきゃ』
そう言って飲み終わった湯呑みをぐっと握る。
緋翠の握力に耐えられず湯呑みが弾けるが、それを気にせずに、緋翠は着物の裾を払い立ち上がった。
無惨は緋翠の心情を読めないため、次に緋翠がどんな行動を取ろうとしているのか予測出来ない。
故に、無惨は緋翠は何処かに話を終わらせて歩いて行ってしまうのではないかと、そう思い緋翠の小さな背中に声を掛ける。
「今回殺せなかった柱の代償は大きい。
幾ら緋翠と言えど、今後の事の運び方によっては許さない」
無惨の言葉に、緋翠は首だけ振り向いた。
そして、その大きな丸い瞳にしっかりと無惨を捉える。
薄紅色に色付いている唇に、珍しく弧を描き言の葉を紡いだ。
『気が向いたら、殺しに行く……
____でも、腕は使えないようにしたから、もう闘えないだろうけどね』
そう言って、緋翠は琵琶の音と共に居なくなる。
無惨は、自分の胸の中に何とも言えない気持ちが残っているのを感じて、それを振り払うようにその場から消えた。
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Cynic** - 覇戮さん» コメントありがとうございます。返信滅茶苦茶遅れてしまってすみません…ずっと書きたくて、書いてる時も楽しかった私も大好きな作品です。殆ど自己満足に近かったのに、沢山の方に読んで頂き評価をもらえて私もとても嬉しいです。温かいお言葉ありがとうございます! (2020年7月3日 22時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
覇戮 - 完結おめでとうございます。とても良い作品で涙が出てきました。応援してます! (2020年5月20日 14時) (レス) id: 193145533a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Cynic** | 作成日時:2020年2月16日 15時