検索窓
今日:24 hit、昨日:13 hit、合計:667,179 hit

34.脱力。 ページ34

「渡辺さん、この世の終わりみたいな感じで私に言いに来たのに...」

ガクッと項垂れた私に、「あれ?お父さんはオカマ掘られたから会社に戻るの遅くなるって連絡して貰っただけなんだけどなぁ」って不思議そうに言う。
そこにお父さんの秘書の高橋さんがやって来た。


「社長、もうじきタクシーが到着します」
「おぉ、高橋くん。君、会社に何て言って連絡入れたんだ?」
「社長が事故に遭われたのでこれから病院に行きます...と」
「それだけ?」
「はい」
「そりゃ、渡辺さんも勘違いするわー!」

アッハッハーと笑ったお父さんに、益々力が抜ける。


「ご無事で何よりです」

ソファに沈むように座ってる私と反対にスっと立ち上がった潤さんが、お父さんにそう言って微笑んだ。

「あれ、君は...」
「澪の松本です」
「どうして君が?」
「お嬢さんの付添で。連絡を受けた時、たまたま同じ喫茶店に居たのでお節介かとは思ったんですが」
「それはそれは...ごめんね、迷惑を掛けてしまって」
「いえ、僕もオーナーの元気そうなお顔を見る事が出来て安心できましたし」

二人のやり取りをボンヤリと見る。
高橋さんがお父さんにソっと近付き「社長、そろそろ」と声を掛けた。
お父さんが「A、お父さんはまだ仕事が残ってるんだけど...」って、チラリと私を見る。


「お嬢さんは僕が責任を持ってまたお送りしますので、どうぞお仕事にお戻りください」

私より先に潤さんが応えてくれた。
何だかもう、ヘナヘナの心に沁みて泣きそう...。


「じゃあ、お願いして良いかな」
「お任せください」
「今度、お礼に食事でもしよう。一度松本くんとはゆっくり話もしてみたかったし」
「はい、喜んで」

「A、ちゃんと松本くんに感謝するんだぞ?」と私に言って、お父さんは高橋さんと共に病院を出て行くとそこで待っていたタクシーに乗り込んだ。


「ハァ...何か本当にすみません...」
「無事で良かったじゃん」
「それはそうなんですけど...」
「さて、俺達も帰るか」
「はい...」

もう一度、ハァ...と溜息を吐いたら潤さんが「ほら」と私の目の前に掌を差し出す。
「え?」と彼を見上げると何も言わず、私の手を引いて立ち上がらせる。


「...潤さん、手あったかい...」
「心が冷たいからね」
「......」
「このタイミングで泣く意味が分かんねぇ」

アハッと潤さんは笑ったけど、私は涙が止まらなくて。
腕で目元を隠しながら彼に引っ張られて、病院を出た。

35.嫌いな女。→←33.夢みたいなのに。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (1665 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
7347人がお気に入り
設定タグ: , 松本潤 , rei
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

橘花(プロフ) - みぞれちゃんいいこ。。パラ潤もやっぱり彼らしくて、すごく素敵なお話でした!淡く苦いような甘いような、夏をすごく感じるお話で。随所で彼女のこととみぞれちゃんのことを考える潤くんが見られて切なかったですね。。10年がどんどん短くなりますように! (2018年10月2日 23時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
Minty(プロフ) - 今頃ごめんだけどやっぱり伝えたくて。私の中のパラ潤はまだまだ彼女を忘れられてなくて、だからみぞれちゃんと話した後は彼女のことを思い出してたんだろうなとか勝手に想像して切なくなってた。そういう裏側の光景まで読めるお話だった。書いてくれてありがとう! (2018年10月1日 23時) (レス) id: 38bee720d5 (このIDを非表示/違反報告)
ま( *^◇^)る(プロフ) - やっと読めた〜!遅くなっちゃった。パラ潤にまた会えて幸せだよーありがと。 (2018年9月25日 19時) (レス) id: 43b5111d45 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - お疲れ様です。っていうの遅い位かな~ 本編ですが、甘さは無いかもしれませんがキュンが、これでもかって位詰め込まれてて凄く良かったです♪みぞれちゃんも未来に期待ができそうだし…reiさんのお話読めて楽しかった♪ (2018年9月25日 19時) (レス) id: aab6d8833f (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - reiさんのお話はみんな好きですが、このシリーズは特にお気に入りです!キャラがみんないい! まるでその世界にまぎれこんだ気持ちになります ありがとうございました! (2018年9月25日 18時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:rei | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72  
作成日時:2018年8月11日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。