シャングリラエッジ【ars J.M】

25.情報収集。←9.9 ページ25

歌詞縛りでも、人名縛りでも、どんなしりとりをしても潤さんは強かった。

「潤さん、しりとり好きなんですか？」

思わず訊いてしまう程に、私は負け続け。

「別に好きじゃないけど」
「でもめちゃめちゃ強い」
「知識量の違いじゃない？」

ちょっとドヤ顔された。
でも確かに、しりとりは知識量の違いで強さが決まる気がする。


「じゃあ、潤さんは何が好きなんですか？」

さり気無く情報収集。
恋する乙女は好きな人の事なら何だって知りたいのだ。

「好きなもん...あ、映画かな」
「映画！フランス映画とか？」
「フランス映画も好きだけど、何で限定した？」

アハ、って潤さんが軽く笑う。

「潤さんの雰囲気で、何となく」
「別に何でも観るよ、雑食」
「アニメとかも？」
「うん、好き好き」
「ディズニー派ですか？ジブリ派ですか？」

「んー...」と腕を組み唸った彼は「難しいけどジブリかな」と言った。
私も！と言いたい所だけど、私はディズニー派。
そこは嘘つけないから、黙っておく。


「最近観てないなぁ…」

潤さんがボソッと呟いた。

「映画館によく行ってたんですか？」
「いや、忙しくてなかなか映画館は行けなかったから家でBlu-rayを観てた」
「家で...あ、潤さんってシェアハウスに住んでたんですよね？」

この流れなら自然と話して貰えるかな？と思ったけど、潤さんは「え？」と少しだけ驚いたように私を見た。

「何で知ってんの？」
「櫻井さんから聞いて...潤さんとどういう友達なのかって説明で」
「あー、そっか」
「他にはどんな人が住んでたんですか？」

本当はものすごくドキドキ...と言うかヒヤヒヤしてるけど、それを隠して質問した。
チラリと潤さんを見ると、特に表情が変わった感じは無い。


「絵本作家と、パタンナーがいた」
「凄い！クリエイティブですね！」
「それとモデル」
「モデル！？旬さんじゃなくて？」
「だから、旬はモデルじゃなくて美容師。みぞれも知ってんだろ」

フハッと息を吐くように笑った潤さんの横顔が、綺麗だと思った。

「私も知ってる人かなぁ…」
「知ってんじゃない？もう引退したけど」
「誰ですか？」
「咲」

一瞬、誰だっけ...と思ったけどすぐに思い出した。
メンストの看板モデルだった人だ。
不思議な雰囲気の美人な男性だった気がして、スマホで検索したら思ってた人で間違いなかった。


「この人と同居なんて凄いですね！」
「普通の兄ちゃんだったけどな」

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