20.正体。 ページ20
悲しいお別れをした人の名前じゃ無かった。
だけど単なるお友達の名前だとも思えない。
「その人は、潤さんともお友達なんですか?」
そもそも、櫻井さんが話してる『A』さんと潤さんが名前を呼びたくないその人が同一人物かどうか分からない。
そう思って質問すると、櫻井さんは「はい」と頷いた。
「同居人でしたから、シェアハウスの」
「え...同居人?」
「はい、もう彼女も出て行きましたけどね。潤が出て行った後に」
...ちょっと、想像と違った。
『友達』と『同居人』は、全然違う気がする。
どうしてその彼女はシェアハウスを出て行ったの?
それを訊いても良いのか、訊くべきじゃないのか、訊いたって櫻井さんが答えてくれるかどうかは分からないけど、でも...
「ただいま戻りましたー」
マグを持って考え込んでると、管理人室の前を通り過ぎる鼻に掛かった低い声。
「あ...待って!潤さん!」
慌てて大声で呼ぶ。「声でけー」と向こうの方から返って来る。
管理人室から出てエレベーターホールにいた潤さんの腕を掴まえたけど、骨っぽいその腕にドキっとしてすぐに離した。
「なに」
「お客さんが」
私達が話してると、管理人室から櫻井さんが出て来て「潤、おかえりー」と穏やかに挨拶。
「え?翔さん、ここに居たの」
「自宅に来られても居ないから会社に来てって言ったのは潤なのに、会社にも居ないってどういう事?」
「いやいや、文句言いたいのはこっち。翔さんのスマホどうなってんの?」
「え?」
「LINE全然既読になんないし。電源切ってるでしょ、電話も繋がらなかったし」
潤さんの言葉に櫻井さんが「あ!」とジーンズのポケットからスマホを出した。
「飛行機で電源切って、そのままだった」
アハーって笑ってる。呑気。
対称的に潤さんは、ハー...って溜息。でも全然怒ってる感じじゃない。
「あ、ホントだLINEいっぱい届いてる」
「頼むよ、翔さん」
「あー、『今からちょっと出る』って来てる!帰って来る時間もちゃんと教えてくれてたんだーアハッ!知らなかったー」
「知らなかったーじゃねーよ」
潤さんがケラケラ笑ってる。
旬さんや斗真さんと居る時ともまたちょっと違う潤さんの緩い表情に胸がギリリと痛んだのは、私と同じ名前の彼女がやっぱり単なる友達じゃ無かったらしいと知ってしまったからなのか。
この緩い表情を、その同居人だった彼女はたくさん見てるはずなんだ。
7347人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
橘花(プロフ) - みぞれちゃんいいこ。。パラ潤もやっぱり彼らしくて、すごく素敵なお話でした!淡く苦いような甘いような、夏をすごく感じるお話で。随所で彼女のこととみぞれちゃんのことを考える潤くんが見られて切なかったですね。。10年がどんどん短くなりますように! (2018年10月2日 23時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
Minty(プロフ) - 今頃ごめんだけどやっぱり伝えたくて。私の中のパラ潤はまだまだ彼女を忘れられてなくて、だからみぞれちゃんと話した後は彼女のことを思い出してたんだろうなとか勝手に想像して切なくなってた。そういう裏側の光景まで読めるお話だった。書いてくれてありがとう! (2018年10月1日 23時) (レス) id: 38bee720d5 (このIDを非表示/違反報告)
ま( *^◇^)る(プロフ) - やっと読めた〜!遅くなっちゃった。パラ潤にまた会えて幸せだよーありがと。 (2018年9月25日 19時) (レス) id: 43b5111d45 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - お疲れ様です。っていうの遅い位かな~ 本編ですが、甘さは無いかもしれませんがキュンが、これでもかって位詰め込まれてて凄く良かったです♪みぞれちゃんも未来に期待ができそうだし…reiさんのお話読めて楽しかった♪ (2018年9月25日 19時) (レス) id: aab6d8833f (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - reiさんのお話はみんな好きですが、このシリーズは特にお気に入りです!キャラがみんないい! まるでその世界にまぎれこんだ気持ちになります ありがとうございました! (2018年9月25日 18時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:rei | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時:2018年8月11日 13時