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「あの人達は全員死んだんでしょう？」
「……………ああ」
「今はあの人達がいないから静かだけど、ここ、割と上の音がよく聞こえるの」
少女は相変わらず明るい声で笑いながら言い、コンコン、と血痕の着いた壁を叩く。
確かにその硬い音は、反響して何重にも聞こえた。
「いつも通りこの部屋の隅で寝てたら、急にあの人達の悲鳴が聞こえて、鬼だのなんだの喚いてた。そのうちピタリと喚き声が消えて、しばらくしてから貴方が来た」
「…………………」
「これが違ったら正義の味方も何も無いんだけど、」
曇げのない青紫色の瞳がこちらを見る。
「伊黒さん、あの人達を助け損ねたでしょ」
「…………………っ」
「やっぱり」
少女が、すっと髪から手を離した。
パサリと音を立てて、眼球のない少女の左眼を隠す。
少女の言う通り、俺がこの屋敷に来た時は既に遅かった。
屋敷の主とその妻と息子は、無惨にも鬼に殺されていた。
「……………すまな」
「この左眼をやったのはね、あの人達」
「………！！」
謝罪を遮って告げられた事実に目を見張る。
「一生痕に残りそうなこの傷をつけたのも、あの人達」
気づけば、少女の声は無機質で、とても冷たくなっていた。
ぽつりぽつりと、しかしはっきりと紡がれるその言葉に込められているのは、普通の人間では持ち得ない程の狂気。
「私が愛する人の子供じゃないからって、この白い髪が気持ち悪いからって」
「………………」
「お母様が死んだ瞬間私をここに幽閉したのも、ぜーんぶ、あの人達」
「…………………お前」
「つまりね？」
少女は、俺の胸倉を掴む。
その細腕でぐいっと顔を近づけ、にっこり笑った。
「貴方があの人達を殺したおかげで、私は救われたの」
「……………………！！」
衝撃だった。
俺のせいでまた人間が死んだ。
俺が殺した。
そう思っていたのに、それによって救われたと、無邪気に笑う少女が目の前にいる。
甘えるなと、俺の中の自分が言う。
そんなことを言ったところで、俺が人を殺した、卑しい人間だということは変わりないと。
でも。
「だから貴方は私にとって正義の味方。そして＿＿＿＿」
こんなにもボロボロで、それでいて神秘的な美しさを持つ少女に。
「ここから出してくれた貴方は、私の英雄なの」
救われた、と言われてしまえば、その安らぎに縋らずにはいられなかった。
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桜舞(プロフ) - あぁごめんなさい！訂正しておきます、ありがとうございます！ (2021年5月3日 9時) (
レス) id: faa91006d3 (このIDを非表示/違反報告)
小桜＠SOS同盟 - 初コメント失礼致します。あの、11話の煉獄さんの訃報のシーンなんですけど、弐ではなく、上弦の参です。 (2021年4月29日 11時) (レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜舞 | 作成日時：2021年3月18日 12時
