６０話 ページ12
ぱちぱちと目を瞬かせるアタシに、日本号は数珠丸の傍からこちらへと歩いてきた。
「ある刀剣に関して、アンタに相談があるンだとよ。目に見えて敵意はなさそうだし、と思ってな。」
「ある刀剣について……？もしかして、青江刀派のにっかりとかかい？」
こそ、と耳打ちしてきた日本号に問うてみれば、彼は静かに首を横に振った。
にっかりじゃない、となると…誰、だ？刀派関係なく、ただ単に一刀剣についての相談か……
「広間で顔を合わせて以来、話すのは初めてですね」
「えっ、あ…嗚呼、そうさねェ……無下にアタシから近づくような事はしてなかったから……それにしても、これは柿木か。教えてくれて有難うねェ、数珠丸や」
この柿木、ともなればお小夜が立ち止まっていたのもわかる。彼は確か柿が好きだった筈だから…チラリと上を見上げれば、生い茂る緑葉に交じって小さな実がちらほらと見えた。
育ちきれば、お小夜に上げる事にしよう。…勿論、皆にもだけどねェ？
「いえ、別にお礼を言われるようなことでも無いので」
小さく呟かれた彼の言葉は静かなこの場所によく響いて聞こえた。
取り敢えず部屋で話をしたい、とのことで、日本号と共に数珠丸の部屋で膝を突き合わせることにした。
数珠丸の部屋は本丸の、大分奥まった場所にありアタシが内番を命じた皆の声も耳を澄ませばほんの微かに聞こえるだけだった。
障子越しに明るい日の光が部屋を照らしてくれている。お互いの表情を読み取るにはほんの少しばかり暗く感じてしまうが、しょうがない。
･･････と、言うか、部屋のここに小さな照明でもあったら楽か。後で政府に頼んでどうにかしてもらうとしよう。
「…私の相談、というのはある刀剣を捜索して助けてあげてほしいのです。場所の名前は分かります。だが肝心の“どこにあるか”が分かりません…私も、他も、八方塞がりで」
数珠丸の伏せられた瞳、瞼が軽く震えている。声は落ち着いてはいるものの、少なからず焦っていたりだとかの気持ちは強いのだろう。
それにしても……
「何処にあるか、分からないだって？」
「ええ」
場所の名前は分かるのにどこにあるかわからないとはどういうこっちゃ……
前任が、なんかしらの術でもかけてない限りは見付かる筈だし…本丸の増築、及び改造にも政府へ申請が必要だ。
審神者思いのまま自分勝手に本丸を弄れるわけじゃあない
アタシがもんもんと考えていれば、数珠丸は続けて口を開いたのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 318人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
病蛟(プロフ) - 勇者の人さん» お褒めの言葉をいただきありがとうございます…自分自身も楽しみ、かつ読者にも楽しんで感動して頂けるような小説をモットーに書いていますので、とてもありがたく思います。体を気にかけていきつつ投稿させていただきますので楽しみにしていてくださると幸いです。 (2021年9月22日 21時) (
レス) id: 1220734e66 (このIDを非表示/違反報告)
勇者の人(プロフ) - 文章が綺麗でとても読みやすく、読んでいて感情が揺さぶられたりと素晴らしい作品ですね。応援しています、これからも無理しない程度に頑張ってください。 (2021年9月22日 2時) (レス) id: 0ba614db75 (このIDを非表示/違反報告)
病蛟(プロフ) - もっちーさん» 一期一振に関する誤字を教えていただき有り難う御座います。修正作業に取り掛かります故…これからもこの作品をどうぞよしなに、楽しめるような続きを投稿させていただきます。 (2021年9月11日 22時) (レス) id: 1220734e66 (このIDを非表示/違反報告)
もっちー(プロフ) - はじめまして！続き楽しみに待ってます！！それと一期が一護になってます! (2021年9月11日 19時) (レス) id: 5828451b09 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：病蛟 | 作成日時：2021年8月18日 23時
