５５話 ページ7
時は深夜。
風呂掃除の後、亀甲と共に急いで居間へ行けばぎりぎり飯には間に合っていた。その後しっかりご飯を食べて酒を飲んで騒いで笑って……確実に言えることは
昼の時より五月蝿い。いい意味で言えば、元気があるッて感じかねェ？
みんな酒に呑まれて眠りこけちまったようで、あんなに騒がしかった居間は次第に静かになっていき、今になってはシンと静まり返って寝息だけが響いている。
皆の警戒のかけらもない無防備な寝顔を眺めて、食器系統の片づけを終わらせた。
そして今。一人の時間となった状態で、アタシは酒を口にする。
夕飯時でも、かなり日本号のペースが速かったから、飲めるほど暇じゃあなかったしねェ。
日本号が自分の金でかった酒を
「いつもお疲れ様、今日くらいはアンタもハメ外してみてもいいんじゃあないか？」
と言いながら渡してくれた時は泣くかと思った。
「…ん、これ旨いな。流石日本号の選んだ酒だ」
居間の前の廊下に胡坐をかいて月見酒。こんなゆっくり酒が飲めるのだって、大分久しぶりだねェ。
一人、徳利に入れた酒を盃に注いで飲み下す。
来たころに黒く垂れこめていたあの雲は見る影もない。綺麗で丸い月が柔い光でアタシを照らしてくれていた。
届くわけでもないのに、なんとなくその月の方向に向かって手を伸ばしてから一人思考を続けて酒を飲む。それを眠くなるまで繰り返す…
「……一人での酒は、日本号と一緒に飲む時より旨くはないね」
「ご所望の日本号じゃあなくて悪いが、一人で晩酌か？辛気臭い」
「っ…おや、鶴丸」
ぽつりとつぶやいた独り言に反応したのは鶴丸だった。彼は夕飯の時に居間に姿を現していなかったから、矢張昼の時強引すぎたか、と反省してはいたのだが…
鶴丸は呆れたような笑みを見せながらアタシの横に腰を下ろした。
少しの間、どちらからも話し出そうとはせずにただ月を眺めながらアタシは酒を飲み続けた。
その時、ふとアタシの脳内にあることが思い浮かぶ
「嗚呼、そうだ。アンタ……亀甲手入れするとき、手入れ道具一式いれた箱おいてったろ」
「………ッは、はァ！？」
「うるッさ…居間であの子たち寝てるんだから静かに」
驚いたように目を見開いて声を上げる鶴丸を静かにさせながら、障子を少し開けて中を見てみれば特段今の声で起きた奴はいないようだった。
鶴丸はアタシの言葉にハッとしたのか、鶴丸は罰が悪そうな顔でそっぽを向いた。
「その反応は、合ってるンだね？」
「……あぁ、」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 320人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
病蛟(プロフ) - 勇者の人さん» お褒めの言葉をいただきありがとうございます…自分自身も楽しみ、かつ読者にも楽しんで感動して頂けるような小説をモットーに書いていますので、とてもありがたく思います。体を気にかけていきつつ投稿させていただきますので楽しみにしていてくださると幸いです。 (2021年9月22日 21時) (
レス) id: 1220734e66 (このIDを非表示/違反報告)
勇者の人(プロフ) - 文章が綺麗でとても読みやすく、読んでいて感情が揺さぶられたりと素晴らしい作品ですね。応援しています、これからも無理しない程度に頑張ってください。 (2021年9月22日 2時) (レス) id: 0ba614db75 (このIDを非表示/違反報告)
病蛟(プロフ) - もっちーさん» 一期一振に関する誤字を教えていただき有り難う御座います。修正作業に取り掛かります故…これからもこの作品をどうぞよしなに、楽しめるような続きを投稿させていただきます。 (2021年9月11日 22時) (レス) id: 1220734e66 (このIDを非表示/違反報告)
もっちー(プロフ) - はじめまして！続き楽しみに待ってます！！それと一期が一護になってます! (2021年9月11日 19時) (レス) id: 5828451b09 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：病蛟 | 作成日時：2021年8月18日 23時
