血の味 ページ5
クリスが財布を出したとき、もうそこには誰もいなかった。
立ち上がって辺りを見回してみても、後姿さえ見つけられなかった。
「なんなんだ、一体。」
あの後、ハンカチを返し忘れたことと財布の中にお金が入ってなかったことに気付いた。
＊
「おかえりA」
「ただいま」
落書きだらけの門をくぐると、一匹の猫が擦り寄って来た。
抱き上げて優しくなでると喉を鳴らす。
「トト、ルハンはまだ寝ているの？」
「たぶんね、下りてきていないもん。」
トトと呼ばれた猫はAの質問に人間の言葉で返事をする。
それに対してAは、驚いた風もなくトトを床に下ろした。
今はもうやっていない、廃墟となった植物園。
それがAの住む場所である。
喋る猫がいて廃墟に住んでいる、常識的ではないこの環境がAの生活であり、存在そのもの。
なぜなら、Aたちこそが一般的な常識からは外れた存在ヴァンパイアだから。
植物園の一番奥にある建物、その中の階段を上り廊下を進んで二番目のドアをノックする。
「ルハン、起きてる？入ってもいい？」
「いいよ。入って。」
中央に置かれた大きなベットにAは近づく。
「具合はどう？」
「だいぶいいよ。ありがとう。」
「あんなもの飲むから。もう少し相手を選んだ方がいいと思う。」
呆れたように言うAに、ルハンは仕方ないんだと嘆いた。
「若い女の首筋を見ると、噛みつきたい衝動が、」
「だからってあんなジャンキー。
まずくて当たり前でしょう。おまけに体調まで崩して。」
私だったらあんな人間から絶対に飲まないのに、兄さんってわからないわ。
人間の血液は日々作られるものであり、その味は本人の生活習慣によって異なる。
コレステロールが多ければドロドロとしているし、ベジタリアンのはサラッとしすぎで味気ない。
薬やお酒を大量に摂取していれば味も変わるし、飲む方つまりヴァンパイアの体調にも影響が出てしまう。
「もう、わかったから。
それより議会の方はどうだったの？見せて。」
ルハンは、Aの額にそっと触れた。
意識を集中させてAの記憶を読んでいく。
「特別なことは何もないね。
もういいよ。」
ルハンが手を降ろすと、Aはハンガーにさっきまで着ていた赤い服をかけた。
ラッキーアイテム
革ベルト
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yori(プロフ) - また来ましたっ（´▽｀*）。ずっと探しててwww見つけた時は息が詰まるほど嬉しかったです。もう一回読み直しますっ。更新は無理しない範囲でしてください (2012年12月13日 16時) (
レス) id: 88ffb53b2c (このIDを非表示/違反報告)
tutu(プロフ) - yoriさん» コメありがとうございます。お返事、更新共に遅くなってしまい申しわけありません。なかなか更新ができない状況ですが、気長にお付き合いくださるとうれしいです。がんばります！ (2012年9月4日 22時) (レス) id: a617facaa6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：tutu | 作成日時：2012年7月1日 23時
