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百五十一振り ページ33

「入って大丈夫です」
応える様にドアが開かれる。
父さんと母さんが居て、
「父さん、母さん、おはよう」
何となく、挨拶をした。
その瞬間、
「A…!」
母さんが私に駆け寄ってくる。
ぎゅっと、私を抱き締める。
とても力が強くて、痛かった。
「良かった…良かったっ……!」
母さんの顔が見えなくても、泣いている事は声で分かる。
「…ごめんなさい、母さん」
恐る恐る抱き締め返すと、母さんは一層強い力で私を抱き締めた。
「A」
父さんの声が頭上から聞こえて顔を上げると、父さんも泣いていた。
ゆっくり私の手を取ると、その場に崩れ落ちる様にして「良かった……」と吐き出す。
「ごめんなさい、父さん」
幼子の様に泣き噦る両親から目を離し、ドアの傍で此方を見つめる木本さんに視線を移す。
『ありがとうございます』
心の中で呟き、頭を下げた。
木本さんは薄らと笑んで、静かに部屋から出ていった。
父さんと母さんは暫く、私に触れながら泣いていた。此処に居る事を確かめる様に、力一杯私を掴んで離さなかった。
__心配、させてしまったのだろう。
こんな風に、私を思って泣いてくれる両親に対して、私は、なんて罰当たりな事を考えたのだろうか。
『私なんて、邪魔なだけだろう。私の事なんて、気にしていないだろう』
自分の卑下する性格を、こうも醜く思った事は無い。
私の事を思って泣く両親が、そんな事、思う筈が__ないとは言い切れずとも、ないに等しいのに。
私のこれは、失礼極まりない。
泣き止んだ母さんが口を開く。
「どこも痛くない?大丈夫なの?」
「うん、大丈夫。この通り!」
私は力瘤を作ってみせた。まぁ、筋肉なんてないので何も出来なかったが。
「動くのが辛いとかはないのか?」
「起き抜けは動けなかったけど、今は全然だよ。ほら」
半身を起き上がらせる。
半信半疑で言ったが、うん、大丈夫だな。ふらっとするくらいは覚悟していたが。
「良かった…本当に、何も無くて」
母さんが、疲れを全て吐き出すかの様に息を零す。
「ごめんなさい。…心配を、かけたと思う」
「心配したに決まってるでしょ。全く、こんな時まで卑下する癖が抜けないなんて………!ずっと言ってるでしょ、相手に失礼なのよ、それ」
「分かってるけど、これはもう性質だから…」
「諦めないで治す努力をしなさいっ」
母さんは苦笑して、私の頭を撫でた。
それが凄く、心地良かった。

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設定タグ:刀剣乱舞 , 山姥切国広 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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ナガミ(プロフ) - 睦月乃さん» 御意見、有難う御座います!良い話だなんて…創作者として冥利に尽きます。大変嬉しいです!!私も長い話の方が好きなので、もうなんなら文庫本になるくらいに書きたいと思います!! (2018年9月16日 0時) (レス) id: 80f8c5534f (このIDを非表示/違反報告)
ナガミ(プロフ) - Lupineさん» 御意見を下さり、有難う御座います!占ツクでは余り長い物を見た印象がないため、長編は嫌われるだろうか…そんなにこの話に興味はないだろうか…と悩んでいたので、長編が好きだといってくださって嬉しいです!もうとてつもなく長く書きたいとおもいます!!! (2018年9月16日 0時) (レス) id: 80f8c5534f (このIDを非表示/違反報告)
睦月乃(プロフ) - 私は長い話の方が好きです! いつも良い話をありがとうございますこれからも頑張ってください応援してます (2018年9月14日 17時) (レス) id: fab13ef4ac (このIDを非表示/違反報告)
Lupine(プロフ) - 私は長編小説を読むのが好きなので長く書いてくださると嬉しいです!これからも応援してます! (2018年9月14日 7時) (レス) id: 4de4e1b52c (このIDを非表示/違反報告)
ナガミ(プロフ) - マナマナさん» コメントありがとうございます!!!そう言って頂けてとっても嬉しいです!!!!!!もう本当に嬉しいです...ありがとうございます(´;ω;`)これからも好き勝手更新するので、お暇でしたら是非見て下さい!!!本当にありがとうございます!!!! (2018年9月1日 18時) (レス) id: 6b18d1cb3a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナガミ | 作成日時:2018年4月4日 21時

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