心が弱い審神者と刀剣男士 肆 【刀剣乱舞】

百四十二振り ページ23

「傷痕、気になりますか？」
問われ、頷く。
「他の些細な傷は良いんですけれど……流石にこの傷は、他人には見せられないなって、思います」
「それなら、傷痕を治す薬を処方してもらえる様、担当医に言っておきますね」
「ありがとうございます…」
「いえ、女の子ですから。可愛い服を着る時等、やはり傷痕は気になりますしね」
木本さんは笑った。
「……そう、ですかね」
何とも曖昧な言葉を返す。
それから、会話がなくなった。
暫く、窓の外を見つめる。
「…木本さん」
「はい、何ですか？」
木本さんに目を移す。
その、山姥切と同色の瞳を見、
「山姥切は、目を覚ましましたか」
木本さんは一瞬きょとんとした後、「ふふっ」と微笑んだ。
「え？！な、何か変な事を聞きましたか…？」
私の問いに、木本さんは首を横に振る。
「いえ、いえ。すみません。本当に堀川さんは、山姥切さんが大切なんだと思いまして」
「え、えぇ？！あの、それは…えっと……」
堪らず目を泳がせる。
初対面の人に、山姥切を好いている事がバレている、という事実に驚く。
「堀川さんが、山姥切さんに血を飲ませるに至るまでの話を聞いていれば分かります。大切に思っていなければ、あんな事は出来ません。それに……自分の状況を理解してから、いの一番に山姥切さんの事を尋ねましたし」
木本さんは目を細めた。
「大丈夫です。山姥切さんは、目覚めていますよ」
「！本当ですか！」
「嘘は吐きません。……それに、私から話を聞いて、気付きませんでしたか？」
何の事か分からずに首を傾げると、木本さんは口元を緩めた。
「堀川さんが夢の中でした行動の話を私はしました。山姥切さんと堀川さん以外に、その行動を知る者が居ますか？」
「…い、居ません、ね」
「私は、その話をする事で山姥切さんが目覚めている、という事を伝えたつもりでしたが……すみません。分かりずらかったですね」
うん。
自分の頭の悪さを露呈させただけだった。
耳まで真っ赤になりそうだ。
頬が熱を持つ。
「…他に聞きたい事はありますか？」
「……いえ」
これ以上、自分の頭の悪さを晒す訳にはいかない。口を噤むと、木本さんは席を立った。
「帰りますか？」
「はい。堀川さんの体調も分かりましたし。それに……」
窓の外を見つめて、木本さんは言った。
「もうそろそろ、貴女に会いに来る頃でしょうから」

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