百三十二振り ページ12
暫く歩いて、
「主、連れてきたぞ」
大広間の襖を開けた同田貫はそう言った。
ご飯の香りがする。
「ありがとう、同田貫」
「礼なんて要らねぇよ」
素っ気なく言うと、同田貫は自席へ行った。
自席に自分も座る。
用意は終わっているな。
「遅れてごめんなさい。……それじゃあ、いただきます」
『いただきます』
皆がご飯を食べ始める。
私は暫く、それを眺める。美味しそうに、嬉しそうにご飯を頬張る皆を見ている事が、幸せだから。
それから、茶碗に盛られた炊き込みご飯を見た。
マスクに手を掛ける。
＿＿その手を、膝の上に置いた。
「……愛染、ご飯要る？」
隣で、口一杯にご飯を詰め込んでいる愛染に、小声で聞く。
私を横目に、愛染は暫く口をもぐもぐとさせていた。
喉が動く。
お茶を少し啜ってから、愛染は首を傾げた。
「またか？主さん」
「ちょ、声がでかいっ」
幾人かの視線が注がれる。
「大将。また飯食わねぇのか」
自席から歩いてきた薬研は、私を見下ろした。
「えっと……」
言い淀む。
山姥切が倒れた時から、ご飯を食べる気が失せた。
理由は明確だ。『私』のせいで怪我をした山姥切を無視して、『私』だけがのうのうとご飯を食べる気になれないからだ。
審神者になりたての頃はよく皆ボロボロで帰ってきて、重傷も少なくなかった。
ご飯を食べる気が尽く失せて、体重が大分落ちる程度には食べられなかった。
今も、それと同じだ。
「…食べる気が、起きなくて」
「そんな事くらい分かってる。また倒れる気か？」
「なっ？！そういう訳じゃ……」
「なら食べられるだろ？大将」
有無を言わせない。薬研は鋭い視線を浴びせてきた。
「…」
薬研の言いたい事は嫌という程分かっている。理解している。
けれど＿＿それを、実行出来るかどうかとは違うんだ。
暫く、炊き込みご飯と睨めっこをする。薬研はじっと、それを見ている。
どうしよう。
その言葉と言い訳をぐるぐると考えていると、横から手が伸びてきた。茶碗を掻っ攫っていく。
すぐ横で、カッカッと茶碗と箸が触れる音がした。コトン、と私の茶碗が机上に置かれる。
「ご馳走様でした！！」
視界の端で、赤髪が満足げに揺れた。
＿＿愛染が、私のご飯を食べてくれたのだ。
「主さん、まだ学校のあれ終わってないんだろ？行ってこいよー」
「あ、ありがとう、愛染。…行ってきます」
薬研の視線から逃れる様に。私は大広間を走って出ていった。
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ナガミ(プロフ) - 睦月乃さん» 御意見、有難う御座います！良い話だなんて…創作者として冥利に尽きます。大変嬉しいです！！私も長い話の方が好きなので、もうなんなら文庫本になるくらいに書きたいと思います！！ (2018年9月16日 0時) (
レス) id: 80f8c5534f (このIDを非表示/違反報告)
ナガミ(プロフ) - Lupineさん» 御意見を下さり、有難う御座います！占ツクでは余り長い物を見た印象がないため、長編は嫌われるだろうか…そんなにこの話に興味はないだろうか…と悩んでいたので、長編が好きだといってくださって嬉しいです！もうとてつもなく長く書きたいとおもいます！！！ (2018年9月16日 0時) (レス) id: 80f8c5534f (このIDを非表示/違反報告)
睦月乃(プロフ) - 私は長い話の方が好きです！ いつも良い話をありがとうございますこれからも頑張ってください応援してます (2018年9月14日 17時) (レス) id: fab13ef4ac (このIDを非表示/違反報告)
Lupine(プロフ) - 私は長編小説を読むのが好きなので長く書いてくださると嬉しいです！これからも応援してます！ (2018年9月14日 7時) (レス) id: 4de4e1b52c (このIDを非表示/違反報告)
ナガミ(プロフ) - マナマナさん» コメントありがとうございます！！！そう言って頂けてとっても嬉しいです！！！！！！もう本当に嬉しいです...ありがとうございます(´；ω；`)これからも好き勝手更新するので、お暇でしたら是非見て下さい！！！本当にありがとうございます！！！！ (2018年9月1日 18時) (レス) id: 6b18d1cb3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナガミ | 作成日時：2018年4月4日 21時
