心が弱い審神者と刀剣男士 肆 【刀剣乱舞】

百六十振り ページ42

強い口調で言う一期に、言葉が返せずに座り直す。
「…ごめんなさい」
「何故謝られますか」
「未熟な審神者で、ごめんなさい」
一期はきっと、私の未熟さに怒っているのだ。確かに皆の主である者が、ただ一人のものの為に奔走しているという現状は良くない。それも私の未熟さ故だ。
それも今日で、終わらせる。
「何を仰いますか、主」
コトン。ほうれん草のお浸しとその他にも色々と乗せられた皿が目前に置かれた。
「主はまだ未熟な子供である、と私は言いましたが、決して審神者としての采配に言及している訳ではないのです」
一期は私から視線を逸らした。その先を追うと、どうやら彼の弟達が楽しげに会話しているらしい。
「主が未熟であるならば、既に私の弟達は幾振りか折れている頃でしょう。しかし、私の弟達は皆揃って、今をこうして過ごせている。これは一重に主の采配があってのこと」
私の頭に手を置いて、
「本当にいつも、ありがとうございます」
一期は笑った。
危うく涙が出そうで、一期から顔を逸らしほうれん草のお浸しを頬張る。出汁が効いたお浸しは、いつものことながら美味しい。
「……審神者としての未熟さでないならば、私自身の未熟さについての言及？」
湯呑みに注がれたお茶を一口飲んで問いかける。
「主の未熟さ…ではないのですが」
一期は言い悩んでいる様で、口元に手を当てた。
「主は決して戦いに関わるべきお人ではないのです。年齢を考えても、性別を考えても。だから私は、心配していて…」
良い言葉が見つからないのか、一期は小さく唸った。
何百年と生きているのに、まるで普通の人の様で、その様が可笑しくて、少し笑ってしまう。
「…主に、自分は未熟な子供だと、きちんと認識していただきたいのです」
一期はそう言って私の事を見つめた。
「無闇に合戦場に出て行ってはなりません。怪我をしたらどうなさるおつもりですか。私達を心配して下さるのは大変有り難く嬉しいのですが、御自分の身体の事も考えて行動なさって下さい。自分が傷付いて私達が直るならばそれで良い、と自分の身体を傷付けるのはお辞め下さい。後……」
耳の痛くなる言葉に、はい、はい、と頭を垂れる事しか出来なくなる。未熟な子供で本当に申し訳ない、と何度も心の中で唱えた。
「…ですが私は胸を張って、貴方は良い主だ、と言います。確かに少々お転婆なところはありますが、それも些細な事。本当に、良い主に恵まれて、私は幸せです」

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