心が弱い審神者と刀剣男士 肆 【刀剣乱舞】

百四十九振り ページ31

大きな窓の外を見ながら、先程まで居た乱達との会話を思い出す。
山姥切が私を好いている、という事が紛れも無い事実であるという事。
皆、私の心中を知っていた事。
＿＿返事は、どうするのかという事。
直接それを問うてきた訳ではない。
ただなんとなく、聞きたいのだろう、と察する事が出来た。勿論答えなど出なかったが。
本丸の様子を聞けば、皆元気にやっている、と言っていた。
山姥切を筆頭に古株の刀剣男士達が舵を取っているのだとか。
「…本丸、早く戻りたいなぁ」
十二時を越えて、まだまだ明るく太陽が照らす青空に目を奪われる。
この時間帯は、いつも、何をしていただろう。
確か、内番の手伝いにでも行っていただろうか。
不意にドアの開く音がした。
「審神者様」
聞き覚えのある声に振り向く。
「こんのすけ！」
とてとてと私の元に歩いてくると、ぽんっとベッドの端に飛び乗った。
「あ、足は入室前に洗っているので心配なく」
「そう」
全く気にしていなかったので少し面食らった。
「審神者様が倒れられてからの事を報告致します。先ず、会議には私が参加致しました。会議の動画は撮影していますが、どう致しましょう？」
「パソコンの方に転送してほしい。お願いします」
「分かりました。会議の内容は新手の時間遡行軍の発現についてが主でした」
『新手の時間遡行軍』。
その言葉に、電波妨害をされた事を思い出す。
政府の回線は、そんな柔なプログラムではない筈だ。それを、妨害されたのだ。
「全本丸に、刀剣男士との会話をこんのすけを通さずとも出来るように、というお触れが出ました。審神者様も例外なく。山姥切とは出来るので、他の刀剣男士とも試みてほしいです」
「分かった。努力する」
「今回の時間遡行軍討伐に出向いた本丸で、まだ刀剣男士の修行が解放されていなかった本丸に、修行が解放される事になりました」
「そう。………？なんて？」
思わず聞き返してしまった。
こんのすけは呆れた目を向けて、もう一度言った。
「審神者様の本丸でも、刀剣男士が修行に行ける様になった、と言いました」
「修行…？！」
堪らず咳き込んだ。
修行とは、簡単に言えば刀剣男士が更なる力を得る為に本丸を離れ、力を得て帰ってくる事だ。
それは確か、ある程度強くなった本丸にのみ認められる筈。
未熟な本丸ではその力を持て余し、剰えその力を使って政府を裏切る、なんて話を聞いた事がある。
「本当に？」
「えぇ。誰を最初に極ましょうか」

百五十振り→←百四十八振り

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す