百三十六振り ページ16
余りの痛さに視界が歪む。
頭は働かず、痛い、という事実しか分からない。
私に何が起こった。私の身に、何が起こった。
分からない。痛い。
痛い。
痛む場所をなんとか見る。
傷は視認出来ない。
血が出ている様子もない。
何だ。何なんだ。
睨めつける様に山姥切の方を見た。
『私』が狼狽えている。
その奥で倒れる山姥切。目が合った気がした。
歪んだ視界には、大まかな位置しか分からないのに。
そこで、ふと冷静になる。
此処は『明晰夢』。
山姥切の夢の中。
山姥切と同調し、私は今、山姥切の夢に介入している。
つまり、これは、山姥切の痛みだ。
私の痛みではない。
山姥切があの時受けた攻撃の痛みだ。
その痛みを、同調した私も体験しているのだ。
「ぐ、ぅ…ぁぁあぁ……！！」
痛みにのたうち回る事も出来ない。
ただ這いつくばって、悲鳴を上げる事しか。
＿＿山姥切はずっと、夢を見ている。痛みに悲鳴を上げる事を許されず、夢から覚める事を許されず、ずっと、ずっと、この夢に囚われている。
きっと、今を逃せば山姥切は夢から覚めなくなるだろう。
根拠は無い。だが確信はあった。
こんな＿＿こんな痛みに、負けて、どうする。
こんな、たかが『夢』の中で感じる痛みに。所詮現実ではない痛みに。山姥切を『夢』から覚めさせる機会を、奪われてたまるものか。
山姥切を返せ。
私の山姥切を返せ。
私の大切な人を、返せ。
「ぐ…ぁ、あぁ……っ…！！」
地面を這う。
惨めに這う。
左側腹部への痛みを堪える。
山姥切の傍へ行く為に。
痛みには、女が強いと古くから言われている。
ならば、ならば、私は、この痛みに耐えられる筈だ。
歯を食いしばれ。全身を力ませろ。
御託なんかどうでも良い。
山姥切を、助け出せ。
私を、山姥切の傍へ、連れて行け。
瞬間、視界が歪む。
涙のせいではない。
空間自体が歪んだ。
それと同時に、目の前に白い何かが見えた。
『私』の声が頭上から聞こえる。
覚えずして、私は『私』を突き飛ばしていた。
『私』が消える。
何故、突き飛ばしたのかすぐには分からなかった。
多分、『私』が居るせいで山姥切は目覚めないのだと、直感的に悟ったからだと、後に考える。
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ナガミ(プロフ) - 睦月乃さん» 御意見、有難う御座います！良い話だなんて…創作者として冥利に尽きます。大変嬉しいです！！私も長い話の方が好きなので、もうなんなら文庫本になるくらいに書きたいと思います！！ (2018年9月16日 0時) (
レス) id: 80f8c5534f (このIDを非表示/違反報告)
ナガミ(プロフ) - Lupineさん» 御意見を下さり、有難う御座います！占ツクでは余り長い物を見た印象がないため、長編は嫌われるだろうか…そんなにこの話に興味はないだろうか…と悩んでいたので、長編が好きだといってくださって嬉しいです！もうとてつもなく長く書きたいとおもいます！！！ (2018年9月16日 0時) (レス) id: 80f8c5534f (このIDを非表示/違反報告)
睦月乃(プロフ) - 私は長い話の方が好きです！ いつも良い話をありがとうございますこれからも頑張ってください応援してます (2018年9月14日 17時) (レス) id: fab13ef4ac (このIDを非表示/違反報告)
Lupine(プロフ) - 私は長編小説を読むのが好きなので長く書いてくださると嬉しいです！これからも応援してます！ (2018年9月14日 7時) (レス) id: 4de4e1b52c (このIDを非表示/違反報告)
ナガミ(プロフ) - マナマナさん» コメントありがとうございます！！！そう言って頂けてとっても嬉しいです！！！！！！もう本当に嬉しいです...ありがとうございます(´；ω；`)これからも好き勝手更新するので、お暇でしたら是非見て下さい！！！本当にありがとうございます！！！！ (2018年9月1日 18時) (レス) id: 6b18d1cb3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナガミ | 作成日時：2018年4月4日 21時
