エピローグ ページ43
「……」
私は、見下ろしていた。
吸血鬼と人間が戦う、戦場を。
廃屋となった、ビルの屋上から。
名古屋決戦が終わってから、幾分かの月日が経った。
私は暫くの間、あの部屋に居た。
どうやらあの部屋は、過去の私が生活していた部屋らしい。
あの部屋から出たのは、つい先日。
柊暮人の元に居る事が、許せなくなった。
どうしてって。
『終わりのセラフ』を発動させたと言ったから。
おかげで、沢山の人が死んだ。
『名誉ある死』？笑わせんな。
私があの大戦後目覚めてから、ずっとあの男は私の傍に居た。
『心配だ』
そう言って。
あの男が他人を心配するだなんて、笑えるね。
時々、三宮葵が私の元にやって来た。
その都度その都度、丁寧に過去の話をしてくる。
『本当の兄弟の様に仲が良かった』
『暮人様は本当にお優しい方で』
『生きていて良かった』
そんな事を、ペラペラ。ペラペラ。
決まって最後に、三宮葵は言うんだ。
『A様は、暮人様の婚約者です』
勿論、初めて聞いた時から拒否した。
三宮葵な柊暮人に好意を寄せているから、殺気を向けられた。
けれど、思わないか。
好きでも無い相手から向けられる好意。その好意は、どれ程気味が悪いか。
柊暮人に迫られても、抜刀して躱す。
それ程に、嫌だった。
元居た世界の事はもう、分からなくて。
私が居なくなって、どうなったんだろう。
育ての親は、私を心配してくれているのかな。
こちらの世界には来られたのに。
元居た世界に戻る事は、出来ない様で。
私はもう、こちらの世界で生きていく事に決めた。
「A」
名前を呼ばれ、背後を振り返る。
「はい、何ですか？グレンさん」
＿＿日本帝鬼軍、中佐、月鬼ノ組、隊長、一瀬グレンの、補佐として。
不安定な一瀬グレンを支える、要として。
「突っ込むぞ」
「今からですか？…戦況的にはいまいちですが」
下を見下ろし、《禍竜》の視覚共有で判断した事を告げる。
しかし、
「それを、俺達でひっくり返すんだろ」
「…貴方は、闇雲に突っ走る優ちゃんじゃないんですから……」
呆れた笑みを浮かべながらも、私は返す。
「…けど……」
『嫌いじゃない』
一瀬グレンと声が重なる。
振り向くと、
「……って？」
揶揄う様に目を細めて、一瀬グレンはそう言った。
私にはもう、戻る場所はない。
生きる為には、殺さなければ。
吸血鬼を。捕食者を。飼い主を。
なら、その道を浸走ろう。
「行くぞ！」
一瀬グレンの掛け声を合図に走り出す。
この背中を、追い掛けて。
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Sayura(プロフ) - ナガミさん» ありがとうございます！紹介させていただきます。お返事遅くなってしまってすみません。 (2017年2月19日 19時) (
レス) id: 5dae6bbc32 (このIDを非表示/違反報告)
ナガミ(プロフ) - Sayuraさん» Sayuraさん、コメントありがとうございます。作者のナガミです。面白い…大変恐縮でございます。Sayuraさんが宜しいのであれば、紹介して頂いても大丈夫ですので、よろしくお願い致しますm(_ _)m更新、頑張らせて頂きます！ (2017年2月18日 23時) (レス) id: 6b18d1cb3a (このIDを非表示/違反報告)
Sayura(プロフ) - はじめまして、Sayuraといいます。とても面白いと思ったので、この作品を私の作品で紹介してもいいでしょうか？嫌だったらすみません。更新頑張って下さい！ (2017年2月17日 0時) (レス) id: 5dae6bbc32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナガミ | 作成日時：2017年1月26日 20時
