欲望のｾｲｷﾞｮ ページ28
とそこで、思考を止める。否、止めさせられる。
あの吸血鬼が、私を蹴ってきたから。
一度じゃない。二度、三度、四度と、何度も、何度も、何度も。
私が普通の人だったなら、この攻撃の最初だけで死ねただろうに。
《鬼》の呪いで、無理矢理傷が癒される。
破裂した内臓が、皮膚に出来た傷が、絶え間なく、絶え間なく、癒される。
「あぁ……」
私を殺そうとする吸血鬼。
こいつに対して、欲望を膨らませよう。
怒り、憎しみ、嫌悪、絶望。そして＿＿殺意。
こいつを、こいつらを殺す力を、私に、私に、私に！
《鬼》が言った。
〈良くやった。これでどうにか出来る。力を与えるぞ、主！〉
〈Aさん、壊れる準備は出来たみたいね〉
その瞬間、ギュルルルルルルルルル。
ギュルルルルルルルルルルルルルル。
《鬼呪》が巡る。
思考も、肉体も、全てを冒そうとしてくる。
暴走寸前。
一歩手前。
狂気と狂鬼の間。
人として居られる、ギリギリの線の上。
私を縛る麻縄を、腕力だけで引きちぎる。
自由となった手で、私を蹴りつけてくる吸血鬼の脚を掴んだ。
「なっ……」
と一瞬目を見開いた吸血鬼。
だが＿＿こいつはすぐに、灰と化す。
《青炎竜》を薙いだから。
死んだのだ。
呆気ない。
クルル・ツェペシの方を見つめる。
この後の行動を、考える。
一瀬グレンの様に。
一瀬グレンがした様に。
クルル・ツェペシが、嘲笑う様に言った。
「ハッ。そんな速さで勝てるとでも思っているのか」
思っていない。
勝つ事が目的では無いから。
〈殺せば良いのよ。貴方の障害になるもの、全てを〉
《青炎竜》の声。艶やかな声。せい欲を刺激するかの様に、吐息をたっぷりと含んだ声。
制御する。
制御する。
欲望を、制御する。
殺してはいけない。
殺してはいけない。
殺してはいけない。
殺してはいけない。
確かな殺意を、鎮める。
苛立ちを、鎮める。
全ての感情を、欲望を、《鬼》にならない様に、鎮める。
鎮めて、鎮めて、鎮めて＿＿クルル・ツェペシに向かって、駆け出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 24人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Sayura(プロフ) - ナガミさん» ありがとうございます！紹介させていただきます。お返事遅くなってしまってすみません。 (2017年2月19日 19時) (
レス) id: 5dae6bbc32 (このIDを非表示/違反報告)
ナガミ(プロフ) - Sayuraさん» Sayuraさん、コメントありがとうございます。作者のナガミです。面白い…大変恐縮でございます。Sayuraさんが宜しいのであれば、紹介して頂いても大丈夫ですので、よろしくお願い致しますm(_ _)m更新、頑張らせて頂きます！ (2017年2月18日 23時) (レス) id: 6b18d1cb3a (このIDを非表示/違反報告)
Sayura(プロフ) - はじめまして、Sayuraといいます。とても面白いと思ったので、この作品を私の作品で紹介してもいいでしょうか？嫌だったらすみません。更新頑張って下さい！ (2017年2月17日 0時) (レス) id: 5dae6bbc32 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ナガミ | 作成日時：2017年1月26日 20時
